ファイナンス 2020年9月号 No.658
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番外編 スポーツを本音で語ろうスポーツ系は得意である。もちろん観る方専門だが。スポーツの話題は、国境を越えて、人と人をconnectし、本音で話が出来る関係を構築するのに、実に有用である。これまでの連載で書いてきたように、超国内的な箱根駅伝からラグビーワールドカップまで、加えてゴルフ、野球、サッカー、アメフト、マラソン、そしてF1とインディ500について、実に多くの国籍の人と話をしてきた。ADBの某ベルギー人幹部と、マニラでゴルフをした後にランチを取りながら、F1ベルギーGPが開催されるスパ・フランコルシャンサーキットのオー・ルージュという上り高速コーナーをいかに攻めるか、という話を延々として、それから本当に腹を割った話が出来るようになった。昨年9月に開催されたF1シンガポールGPに行ったら、特定の時間、ピットレーンに加え(F1の車が時速300kmで走る)メインストレートも歩くことが出来た。ここではアジアのいくつかの国の大臣・副大臣と偶然出会い、挨拶をする機会を得た。そうした時に互いの贔屓のチームのことを延々とエイゴで語り合うのは、実に楽しい。シンガポールGPのメインストリートで大勢の人がピットレーンを歩くところが、私が最も真剣に観るスポーツであるフィギュアスケートについては、人生で一度も他の国の人とコネクトしたことが無い。韓国人、カナダ人、米国人、そしてロシア人。詳しい人に出会ったことが無い。こちらは、3回転アクセル、ルッツ、ループ、フリップ、サルコウ、トゥループを見て区別できる眼力を備えているのに。特にルッツとフリップは踏み切るエッジが左足の外側か内側かの違いだから、重要な試合は録画して上位選手のジャンプを2回ずつ巻き戻してエッジエラーをチェックしなくてはならない。最近は4回転ルッツ(平昌オリンピック前に羽生選手が練習で怪我をしたジャンプ)という途方もないことを女子でも平気でやる選手が増えているから、私の作業も増えるばかりである。これまで、国際機関に何年も勤務し、国際会議に何十回も出席したが、こうした作業を行いジャンプの構成やプログラムの難易度を語れる人に出会ったことが無い。あれだけ世界的に人気のあるスポーツなのに。何かの理由で、他の人に語るのを控えているのかもしれない。もう少し本音で話をして、殻を破って欲しいと、いつも思っている。40 ファイナンス 2020 Sep.SPOT

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