ファイナンス 2020年9月号 No.658
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はじめに~熊野古道の魅力~今夏まで丸三年間、和歌山県で勤務する機会を幸いにも与えていただき、その間、公私ともに様々な得難い経験をさせていただいたが、この中でも特に、和歌山が誇る世界遺産、熊野古道を取り上げたいと思います。一言で「熊野古道」といっても、一本の道というわけではなく、紀伊半島西岸の田辺から紀伊半島を横断して熊野三山に至る「中なかへち辺路」や、紀伊半島西岸を海岸線沿いに通行する「大おおへち辺路」、高野山と熊野本宮大社の2つの霊場を結ぶ「小こへち辺路」などがあり、熊野古道はこれらの参詣道の総称となっています。熊野古道はその全体が2004年に世界遺産に登録されたところですが、その登録名が「紀伊山地の霊場と参詣道」となっていることからも分かるとおり、参詣道である熊野古道に加えて、「吉野・大峯(金峯山寺、大峰山寺など)」「熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社など)」「高野山(金剛峯寺など)」の3つの霊場がまとめて世界遺産として登録されており、和歌山県・奈良県・三重県の3県をまたぐ広い範囲にわたっているところが、日本に所在する他の世界遺産と比べても特徴的な点となっています。さらに特徴的なのは、特定の建造物や地域ではなく、霊場と参詣道を取り巻く「文化的景観」がキーワードになっている点です。紀伊山地に形成された3つの霊場とそこに至る参詣道が、「古来以来、自然崇拝に根ざした神道、外来の仏教、その両者が結びついた修験道など、多様な信仰形態が育んだ神仏の霊場であり、参詣道とともに広範囲にわたって極めて良好に遺存している比類のない事例」であり、「それらが今なお連綿と民衆の中に息づいている点においても極めて貴重」という点が世界遺産登録の際に評価されています。神秘的な大自然の中で神道と仏教の信仰に触れ、スピリチュアルな体験ができることなどから、近年、外国人、特に欧米の観光客に人気が出てきており、世界的に有名な旅行ガイドブックである「ロンリープラネット」の2018年版において、「紀伊半島」が世界で訪れるべき地域の第5位に選出されています。私も時間を見つけては、前述の中辺路や小辺路のほか、熊野三山のうち熊野那智大社と熊野本宮大社を結ぶ大おおくもとりごえ雲取越・小こくもとりごえ雲取越など、多くの熊野古道を歩きましたが、道で行き違う人の多くが外国の旅行客であり、外国人からの人気の高さが伺えました。このように近年、世界的な評価が高まる中、2019年には世界遺産登録15周年を記念して、世界遺産の「価値の継承」と「さらなる魅力の発信」のため、多くの各界の著名人が名を連ねる「高野・熊野を愛する100人の会」が発足するなど、更なる盛り上がりを見せているところです。図:熊野古道全体図色々と歩いた熊野古道の中でも、ここでは特に印象的であった「大おおみねおくがけみち峯奥駈道」を紹介したいと思います。和歌山、修験の道を行く~熊野古道「大峯奥駈道」~前・和歌山県財政課長 長畑 匡紀和歌山県PRキャラクター「きいちゃん」 ファイナンス 2020 Sep.27SPOT

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