ファイナンス 2020年9月号 No.658
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助成金の上乗せ支援などとなっている。なお、感染拡大防止協力金については、速やかに事業者の手元に行き渡ることが重要との考えのもと、支給対象となる約15,500件について、6月下旬には9割を超える支給を終えるなど、全国的にも極めて速いスピードで執行された。4「県有施設整備・新型コロナウイルス感染症対策基金」さて、これらの予算を措置するためには、当然財源が必要となる。先述したように、地方自治体には赤字債の起債が認められないので、他の手段により財源を工面する必要があった。まず、成立したばかりではあるが、令和2年度当初予算の見直しを行った。全部局の予算をもう一度洗い直し、感染症の拡大に伴い一部中止や延期が決まった事業や、不急の事業の予算を減額することにより、約16億円を捻出することができた。しかしながら、財源としてはなお約87億円が必要であった。ちょうどこの頃、国の地方創生臨時交付金の岐阜県への第一次交付限度額の内示があったが、約67億円という結果であったため、交付金を最大限活用した上で、差し引き20億円を更に捻出することが求められた。先述したように、このような場合は財政調整基金から取崩しを行うのが通常の対応である。しかし、今後、感染症対策として更なる支出が想定されることや、大幅な税収減が見込まれる(先述の減収補填債はあるが、消費税が対象税目となっていないなど、税収減を全て起債で補うことはできない)ことも考えると、県にとっていわば「ラストリゾート」である財政調整基金を安易に取り崩すことは慎重に考える必要があった。ところで、岐阜県では現在、老朽化が進んだ現庁舎の隣の敷地に新たな県庁舎を整備するための工事を行っており、「県有施設整備基金」にそのための財源を積み立ててきた。もともと、事業費の2分の1を基金から出し、2分の1を県債発行で賄う予定であったが、法令上、事業費の4分の3まで県債の充当が可能であることから、県債の発行割合を増やす形で財源の組み換えを行えば、基金に積み立ててきたお金の一部を感染症対策に回すことができる。そこで、条例を改正し、基金名も「県有施設整備・新型コロナウイルス感染症対策基金」とすることで、基金を感染症対策の財源に充当可能とし、ここから約20億円の取崩しを行った。5過去最大の補正予算編成(6月)緊急事態宣言後、「オール岐阜」体制で対策に取り組んだ結果、4月末以降、県内の感染状況は落ち着きを見せた。県内の感染者は4月末に累計149人であったが、6月末時点では156人で、2カ月間での新規感染者は7人にとどまった。この間、5月14日には国の緊急事態措置が解除された。学校も6月1日から分散登校により段階的に再開され、6月中旬には全ての小中高校において通常の授業に移行した。このように、県民生活は徐々に日常を取り戻しつつあったが、一方で新型コロナウイルスが「未だに日常に潜んでいる」ことを忘れず、第二波、第三波に耐えうる備えを打っておく必要があった。同時に、打撃を受けた県経済を回復させ、事業、雇用を守るための更なる対策が求められた。更に、感染拡大を契機に進みつつある「デジタルトランスフォーメーション」の加速化等にも取り組んでいく必要があった。こうした状況認識のもと、コロナ対応としては5度目となる補正予算を編成し、6月23日開会の議会に提出、7月9日に可決成立した。内容は、1感染防止・医療 2経済の再生 3子どもたちを守り育てる教育体制の再整備 4「新たな日常」・社会経済の変容 の4本柱から構成されるものとなった。詳細は表1をご覧いただきたい。補正予算の総額は約1,105億円となり、岐阜県が編成した補正予算の金額としては過去最大の規模となった。この財源であるが、予算の半分弱を占める約513億円は県制度融資貸付金となっており、これは金融機関経由で事業者に貸し付けられる資金で、金融機関から年度末に一旦返還されるものであるため、県の持ち出しは必要ない。残額のうち、医療提供体制整備・感染防止対策予算には緊急包括支援交付金(約352億円)、経済再生対策等の予算には地方創生臨時交付金(約16 ファイナンス 2020 Sep.SPOT

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