ファイナンス 2020年9月号 No.658
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なっていたが、国内での感染の広がりは見られず、岐阜県内の感染者もゼロであった。この時点では今後の広がりが見通し難い状況であったため、当初予算では、新型コロナウイルス対応のための特別な対策は計上しないが、今後の感染の推移を見て機動的に対応する予定であった。22度の補正予算編成(3月)その後、2月26日に県内で初の感染者が確認された。また翌27日には総理から全国すべての小中高校の休校要請があり、県内の小中高校も休校となった。こうした状況の下、県は2月28日に「新型コロナウイルス感染症対策総合アクションプラン」をとりまとめ、これに基づいた施策を実行するため、3月4日と3月18日に補正予算を提出、いずれも原案の通り可決された。内容は、前者は、県保健環境研究所の検査体制強化のための機器整備、マスクや消毒液などについて消費者に冷静な購買行動を促すための啓発、長期休校に伴う中高生の心のケアを図るためのSNS相談窓口の開設等(総額2,600万円)であり、後者は、収入が減少した方への緊急小口資金の貸付、特別支援学校の生徒が利用する放課後デイサービスへの運営費助成、事業者の円滑な資金調達を支援するための休日相談会の開催など(総額3億4,000万円)である。3緊急事態宣言、感染拡大防止協力金 (4月・5月)3月下旬から4月中旬にかけて、県内では合唱団やナイトクラブでのクラスターが発生、累計感染者数は3月17日時点の3名から4月16日時点で135名へと、急速に増加した。このような中、県は、まず4月3日に「ストップ 新型コロナ 二週間作戦」を打ち出し、「不要不急の外出の自粛」「感染リスクが高まる密閉、密集、密接が揃う場の徹底回避」を県民に要請した。そして、4月10日には県独自の「非常事態宣言」を発出するとともに、今後実行すべき施策を「『非常事態』総合対策」としてとりまとめた。対策の内容は、(1)県民、事業者への「ステイホーム(在宅)」「ソーシャルディスタンシング(人との距離)」の徹底、学校の臨時休業の延長、幼稚園、保育所、放課後児童クラブへの休園・閉所要請などの「オール岐阜での感染防止対策」(2)目標数値を明記した検査体制の拡大と柔軟かつ徹底した検査の実施、病床数確保、後方施設設置などの「医療提供体制の強化・充実策」(3)雇用調整助成金の上乗せ支援、コロナ離職者の再雇用等の「景気経済・生活雇用対策」となっている。その後、4月16日に、国は特措法に基づく緊急事態宣言の対象区域を全都道府県とするとともに、岐阜県を特に重点的に取り組むべき「特定警戒都道府県」に指定した。これを受け、県は直ちに特措法に基づく措置を含む「『緊急事態』総合対策」を決定した。具体的には、4月18日から5月6日までの間につき、ナイトクラブ、バーなどの「遊興施設」、パチンコ店、スポーツジムなどの「運動・遊戯施設」などを対象とした休業要請、喫茶店や居酒屋などの「食事提供施設」への営業時間短縮要請を行った。そして、これらの要請に全面的に協力いただく中小事業者に対し、市町村と連携し、50万円の協力金を支給することとした。こうした対策を実施していくにあたっては、当然ながら裏付けとなる予算措置が必要となる。予算措置としては、対策全体を、即刻対応すべき施策とそれ以外の施策に仕分けし、前者を専決処分(地方自治法上認められた制度で、特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかな場合に、知事が議会の議決すべき案件を処分するもので、次の議会において処分の承認を求めるもの)、後者を5月に開会される議会へ提出することとした。前者の内容は、医療機関に対するウイルス検査機器の導入支援、軽症ないし無症状患者を受け入れる民間ホテルの借上げ、金融機関から実質無利子・無担保で融資を受けられる県制度融資の創設などとなっており、後者の内容は、先述した感染拡大防止協力金のほか、PCR検査に必要な検体を採取する「地域外来・検査センター」の県内各圏域での設置、患者の治療などの対応のため帰宅できない医療従事者への宿泊費の助成、医療従事者への特殊勤務手当の支給、雇用調整 ファイナンス 2020 Sep.15岐阜県における新型コロナウイルス感染症への予算上の対応について SPOT

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