ファイナンス 2020年9月号 No.658
18/88

はじめに今年に入ってから全国、全世界に拡大を続けている新型コロナウイルス感染症は、都道府県にとって、目下の最重要課題となっている。感染者を収容する病床の確保など、医療提供体制の整備は都道府県が行っているし、保健所の設置・運営は政令市・中核市を除き都道府県の役割である。新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下「特措法」という。)に基づく休業要請や休業指示は都道府県知事の権限であり、またインバウンド需要消失により打撃を受けた県内の観光業の再生、県立高校等の学校の休校・再開など、都道府県が感染症対策について担う役割、判断すべき事項は非常に大きい。連日ニュースやワイドショーなどで、都道府県知事の記者会見での発言などが取り上げられているが、近年、都道府県という行政組織とその判断がこれほど注目されたことはなかった、といってよいだろう。感染症対策のために編成された国の補正予算についても、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金(3兆円:令和2年度2次補正予算後。以下「地方創生臨時交付金」という。)、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(2兆3,860億円:同上。以下「緊急包括支援交付金」という。)をはじめ、その多くが地方自治体において執行されるものとなっている。筆者は現在財務省から岐阜県に出向しているが、岐阜県も様々な感染症対策を打ってきた。そこで、本稿では、岐阜県がこれまでに新型コロナウイルス感染症対策としてどのような予算上の対応を行ってきたかを、時系列を追って解説していきたい。なお、文中意見にわたる部分はすべて筆者の見解であり、筆者の所属する組織の見解ではない。本論に入る前に、国と地方との予算の違いについて説明しておきたい。国と地方の予算制度には異なる点が色々あるが、最も大きな違いは、地方自治体は赤字債の発行が基本的にできない、という点である。すなわち、国は特例公債法に基づき、いわゆる赤字国債の発行が可能であるのに対し、地方自治体は、公共事業等の投資的経費に対する起債や、税収が想定よりも下回った場合の減収補填債など、起債が可能な場合が限定されているのである。新型コロナウイルス感染症対策として必要な事業は、そのほとんどが投資的経費ではない、いわゆるソフト事業であることから、起債で対応することはできない。地方自治体は財政調整基金という、想定外の支出に対応するためのバッファーを持ってはいるが、今回の事態に対応するために必要な予算規模は、そのバッファーで対応できる規模をはるかに超えるものであることから、後に詳述するように、予算担当者としては、「財源をどう確保するのか」という課題に頭を悩ませることとなった。1令和2年度当初予算決定(2月)国の予算は毎年12月に閣議決定され、1月に国会に提出されるのが通例であるが、地方自治体の場合、年内に予算の内容について協議を進めつつ、年末に示される国の予算(特に地財計画)の内容を踏まえ、予算の大枠を決めていく。このため、令和2年度の岐阜県当初予算(一般会計の総額8,420億円)は、2月6日に決定・記者発表であった。この頃、ダイアモンドプリンセス号の船内で新型コロナウイルスの感染者が広がっていることが話題に岐阜県における 新型コロナウイルス感染症への予算上の対応について岐阜県 総務部長 横山 玄14 ファイナンス 2020 Sep.SPOT

元のページ  ../index.html#18

このブックを見る