ファイナンス 2020年9月号 No.658
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令和元年度決算が令和2年7月31日に公表された。以下、令和元年度決算の歳入のうち、税収の概要について紹介する。1ポイント令和元年度決算税収は58兆4,415億円であり、前年度から▲1兆9,149億円減少した。消費税率引上げにより消費税は増収したものの、所得税、法人税が減少したことによる。令和元年度補正後予算額(60兆1,800億円)との比較では、法人税や消費税を中心に▲1兆7,385億円下回った。新型コロナウイルス感染症の影響により企業収益や消費・輸入が減少したことに伴うものと考えられる。2主要な税目〈所得税〉※税収全体の約3割所得税は19兆1,707億円である。前年度から▲7,299億円減少し、補正後予算額を+1,067億円上回った。好調な雇用・所得環境を背景に給与税収は増加したものの、前年度に生じた一時的な大口配当の剥落の影響(対前年度比▲0.8兆円)により、前年度から減少したものである。【給与】〈源泉分・申告分〉給与税収は11.9兆円である。前年度から+0.2兆円増加し、ほぼ補正後予算の見込み通りとなった。この背景として、雇用者報酬が対前年度比+1.8%の増と7年連続で増加するなど、良好な雇用・所得環境が継続していたことが考えられる。【配当】〈源泉分〉配当税収は4.9兆円である。前年度から▲0.2兆円減少し、補正後予算額を+0.2兆円上回った。前述のとおり、前年度に生じた一時的な大口配当の剥落の影響もあり、前年度から減少した。【株式譲渡】〈源泉分・申告分〉株式譲渡税収は0.7兆円である。前年度から▲0.1兆円減少し、補正後予算額を+0.1兆円上回った。〈法人税〉※税収全体の約2割法人税は10兆7,971億円である。前年度から▲1兆5,209億円減少し、補正後予算額を▲9,179億円下回った。3月期決算の上場企業(全産業約1,700社)の経常利益は、新型コロナウイルス感染症の影響により対前年度比▲19.9%の減少となっており、企業業績の急速な悪化を背景に法人税収も減少した。〈消費税〉※税収全体の約3割消費税は18兆3,527億円である。前年度から+6,718億円増加し、補正後予算額を▲7,093億円下回った。その構成を見ると、国内取引に係る収納(国税庁分)が18.3兆円(対前年度比+0.7兆円)、輸入取引に係る収納(税関分)が5.4兆円(同+0.2兆円)、輸出等に係る還付が▲5.4兆円(同▲0.2兆円)であった。消費税率の引上げにより、前年度からは増収となったものの、新型コロナウイルス感染症の影響により、消費・輸入が減少したことに伴い、補正後予算額における見込みを大きく下回った。個人消費の動向を見ると、民間最終消費支出は対前年度比▲0.1%の減であり、令和2年1月時点の政府経済見通しにおける見通し+1.2%を大幅に下回った。同様に、財貨・サービスの輸入についても、対前年度比▲6.1%の減となり、政府経済見通し時の▲4.0%を大幅に下回っている。このように、年明け以降、新令和元年度決算税収について主税局総務課主税企画官 佐野 美波/課長補佐 森田 茂伸10 ファイナンス 2020 Sep.SPOT

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