ファイナンス 2020年8月号 No.657
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和元年12月に策定した「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」に加えて、G20首脳会議における「共同戦線を張る」との合意に基づく国際協調の下、危機克服に向け、財政・金融・税制といったあらゆる政策手段を総動員することにより、4月7日には「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」及び令和元年度第1次補正予算を策定した(同経済対策及び第1次補正予算は、同20日に一部変更。第1次補正予算は、同30日に成立)。更に、5月27日には、第1次補正予算を強化するため、第2次補正予算を編成した(第2次補正予算は、6月12日に成立)。緊急事態宣言の全面解除を受け、感染拡大の防止の取組みを進めつつ、社会経済の活動レベルを引き上げていくことになるが、完全な日常を取り戻すまでには時間を要することが想定される。こうした中、引き続き、困難な状況にある国民・事業者の方々をしっかりと支え、雇用と事業と生活を守り抜くとともに、次なる流行のおそれに万全の備えを固めるため、同予算を策定し、予算成立後、直ちに執行を行ってきている。雇用・事業・生活を守り抜き、経済の力強い回復と社会変革の推進を実現するため、引き続き、緊急経済対策や補正予算を可能な限り迅速かつ適正に執行するとともに、内外の状況を注意深く見極め、必要に応じて、臨機応変に、時機を逸することなく対応する必要がある。また、トップレベルでも緊密に連携した日本政策金融公庫(以下、「日本公庫」という)や日本政策投資銀行(以下、「政投銀」という)等の政府系金融機関には、顧客に寄り添う重要な現場を守り、不確実性の高い困難な状況の中で、未曽有の膨大な業務量を処理して頂いた。本稿においては、新型コロナウイルス感染症に対する経済政策対応の前衛を務め、予算規模的にも中核を占めてきた企業資金繰り支援について、国民への説明責任の観点から概説する。この資金繰り支援プロジェクトは、小生を責任者として、政策金融課(廣光俊昭前課長)を総合政策課(岩元達弘前課長、上田淳二経済財政政策調整官)が支援する形で、総括審議官グループ一体となって取り組んできた。本稿の執筆においても、新型コロナウイルス感染症の悪影響から国民を守るため昼夜を問わず一緒に闘ってきた極めて優秀にして職務に忠実な中堅の仲間達、即ち、小生が全面的に信頼する梅村元史氏を中心に、高橋慶子氏、足利貴聖氏、宮地和明氏、田嶋一基氏、中川忠明氏、坂口雄紀氏、末松智之氏、朏島大樹氏達、特に、坂口氏、末松氏の貴重なご協力を頂いた。改めて御礼申し上げる。他方、本稿の意見に渡る部分は神田個人の私的見解であり、政府や財務省の公式見解ではないことを確認しておきたい。(2)経済状況新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、各国において、都市封鎖や外出規制が講じられ、需要が大幅に落ち込むとともに、サプライチェーンが寸断され、グローバルな人やモノの流れが急速に収縮した。日本経済についても、世界経済の低迷による影響や、サプライチェーンを通じた生産活動への影響、外出自粛等によるサービス消費への影響など、深刻な影響が生じており、厳しい状況にある。(図1 新型コロナウイルス感染症の経済への影響と対応)こうした中で、令和2年1-3月期の日本の実質GDP(2次速報値(改定値))は、前期比▲0.6%(年率▲2.2%)と2四半期連続のマイナス成長となった。4-6月期についても、4月7日に発令された緊急事態宣言に基づく外出自粛等の各種感染防止措置を受けて、極めて厳しい状況となり、7月中旬時点の民間予測では前期比6.5%(年率▲23.5%)のマイナス成長が見込まれている。一方、足もとでは、5月25日に緊急事態宣言が全面解除され、社会経済活動のレベルを段階的に引き上げていく中で、消費が持ち直すなど、日本経済は持ち直しの動きがみられる状況にある。日銀短観6月調査(7月1日公表)では、大企業・製造業の現状判断は▲34と悪化(3月調査▲8)し、日本経済の厳しい状況を反映した結果となった一方で、先行き判断は▲27となっており、改善の兆しを見せている。(図2 日銀短観(2020年6月調査))こうした厳しい経済環境にあって、政府は、早い段階から事業の継続と雇用の維持を優先課題としてきた。事業の継続については、次節以降で詳述するが、雇用の維持については、各種政策対応の効果もあって、企業が雇用を守り、踏みとどまっている状況にある。 ファイナンス 2020 Aug.3新型コロナ感染症対策に係る資金繰り支援について 特 集

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