ファイナンス 2020年8月号 No.657
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●チェンマイ・イニシアティブの実施支援また、AMROはチェンマイ・イニシアティブの事務局機能を果たし、その実施を支援している。チェンマイ・イニシアティブは外貨支払いに支障をきたした国に対しドル資金を供給し、危機の連鎖と拡大を防ぐことを目的としたものであり、2010年には、二国間契約に基づく個別の通貨スワップの形式を改め、1本の多国間契約に束ねられた(チェンマイ・イニシアティブのマルチ化(以下、CMIM))ほか、2014年7月には、資金規模の2400億ドルへの倍増、危機発生前に予防的にドル流動性の供給枠を設定する機能(CMIM Precautionary Line)の導入、IMFの資金支援を伴わずにCMIM独自で支援できる『IMFデリンク』割合の30%への引上げを内容とする機能強化が図られている。さらに、本年6月には、IMFとの協調融資を容易にするための貸出制度の柔軟化、コンディショナリティーについての法的根拠の導入などを主要な事項とするCMIMの更なる機能強化に係る契約書の改定も発効した。AMROはCMIMの事実上の事務局として、例えば、上記のPrecautionary Line の適格性判断のためのツールを開発するとともに、同ツールを毎年のサーベイランスで活用を図ってきた。また、実際にCMIMが発動される場合の資金の引き出し条件を定めるASEAN+3当局の議論を裏で支えるとともに、毎年机上演習(テストラン)を行っている。●技術支援の提供AMROでは、日中韓3か国からの資金貢献を受けて、メンバー国に対する技術支援を提供している。例えば、2019年には、域内の後発途上国であるカンボジア、ラオス、ミャンマー、及びベトナムの財務省職員や中銀職員など計12名をSecondeeとして受け入れ、AMRO職員と共にサーベイランス業務などに従事することなどを通じ、母体組織職員の能力向上に貢献している。また、支援対象先国の財務省及び中央銀行のニーズを踏まえ、具体的な技術支援プロジェクト(例えば、銀行のストレステストなど)も実施している。*3) G20やG7などの国際会議体と同様、ASEAN+3でも毎年共同議長国がローテーションで交代する。ASEAN+3における共同議長国はASEAN10か国から1か国、日中韓から1か国の計2か国が担当し、本年(2020年)の共同議長国は日本とベトナムである。●パートナーシップAMROは、他の国際機関等とのパートナシップ構築にも積極的に取り組んでいる。例えば、これまでに、国際通貨基金(IMF)、アジア開発銀行(ADB)、欧州安定メカニズム(ESM)、ラテン・アメリカ準備基金(FLAR)などとの間で協力覚書(Memorandum of Understandings)を結び、情報交換、共同プロジェクト/イベント等の実施、人事交流などについて連携深化に努めている。さらに、ADBやアジア開発銀行研究所(ADBI)、OECDや東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)と共同で研究会を実施しリサーチ能力の向上に努めているほか、ここ数年、ESMやFLAR等の地域金融取極(RFA)と共に、研究会や協議を積極的に行い、グローバルな金融セーフティネットの強化に努めている(参考:写真)。写真:2019年10月にワシントンDCで開催された第4回地域金融取極(RFA)ハイレベルダイアローグの一幕より。各RFAのヘッドの他、IMF専務理事やG20 国際金融アーキテクチャー・ワーキンググループの共同議長が参加した。2.業務紹介私は、戦略調整グループヘッド(Group Head for Strategy and Coordination)として、主に、ASEAN+3各国当局との調整などの渉外活動や広報活動を担っている。着任から今年の6月で1年が経過したところ、この一年間の活動を簡単に振り返ってみたい。まず、我々のグループでは、AMROの窓口として各年の共同議長国*3と協力しつつ、ASEAN+3財務プロセスの各種会合の運営を担っている。やや脇道にそれるが、ASEAN+3の枠組みは、アジア通貨危機最中52 ファイナンス 2020 Aug.連載海外 ウォッチャー

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