ファイナンス 2020年8月号 No.657
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た。そして育った果実から種をとり、それを翌年にまいて50本ほどの苗を作り、さらにその中から葉が大きく質の良い苗を選び抜いて植栽し、約20本を育てた。」佐藤錦を生んだ山形で、令和元年のさくらんぼの出荷量は1万トン超と、実に全国の74%をしめています(令和元年11月農水省作況調査)。まさに果樹王国の名にふさわしいのではないかと思っています。本年5月の作柄予想では平年の収穫量14千トンに比してやや少ないとされていました。今年度も高品質なさくらんぼで我々消費者を楽しませていただきました。今後の収穫量も期待されるところです。写真:令和元年6月のさくらんぼ狩りの様子。青空に映える赤い宝石!4月山めのう先に明治時代のさくらんぼの品種について珊瑚という品種があったことをご紹介しましたが、そのほかにもメノウ、こはくといった品種もあったのだそうで*9) 山形県「月山めのう」(https://www.pref.yamagata.jp/ou/shokokanko/110010/kogeihin/cate13-01.html、令和2年7月19日最終閲覧) 。*10) 飯田孝一氏監修『ずかん 宝石』(技術評論社、2012)。*11) 「ジオの視点で見る『雪旅籠の灯り』」〔西川町役場編『西川』720号4頁(平成28年)。す。私は山形の有数の豪雪地帯である西川町でそのメノウが採れ、月山メノウと呼ばれていることを知りました。メノウは実に多彩な色のものがありますが、筆者は見事な赤色のものに出会うことができましたので、それについて若干触れたいと思います。山形県のウェブサイトによれば、出羽三山や朝日連峰の麓にある西川町では、昭和45年頃にメノウが発見されました*9。メノウが作られる過程は次のようなものだそうです。地表近くで溶岩が冷えて岩石になるとき、水蒸気やガスの気泡が溶岩の中に丸いすきまが作られます。溶岩がすっかり冷えた後、そのすきまに地下水が入り込み、含まれていたケイ酸(SiO2)がゆっくり沈殿し、ミクロサイズの結晶の層ができます。これを繰り返しながら縞模様が作られていき、その過程で不純物が混ざるとその層に色がつくとされています*10。月山メノウの由来である月山について、西川町の広報誌から少し引用いたします。月山は山形県の中央部にあり、出羽丘陵の南部に位置する標高1,984メートルの火山で、隆起した出羽丘陵上に約80万年前から30万年前に形成された火山体です。現在の鳥海山程度の標高があった月山は南北に貫く断層の活動によって崩れ落ち、西側の山体が半分以上失われました。この山体崩壊により東側は緩やかな溶岩地形、西側は屏風のような急崖という二面性を持つ現在の月山の姿が形作られました。*11この溶岩の中のすきまに入り込んだ地下水のケイ酸がメノウを形作る揺籃となったことは想像に難くありません。余談となりますが、その切り立った急崖の斜面に日(図表出所:「ジオの視点で見る『雪旅籠の灯り』」〔西川町役場編『西川』720号4頁(2016)。〕42 ファイナンス 2020 Aug.SPOT

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