ファイナンス 2020年8月号 No.657
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我が国の未来のために国際貿易を取り巻く情勢は刻々と変化しており、様々な環境変化が予想される中、税関行政の中長期ビジョンとして「スマート税関構想2020」を取りまとめました。新型コロナウイルス感染症流行の中、関税局・税関は、救援物資やライフラインを確保するための物品の優先的な通関に加え、輸出入者にとって利便性の高い税関官署での輸出入申告、原本の提出を必要とする書面の電磁的記録での提出、押印を必要とする提出書類に対する押印の省略等、関係者を支援するために弾力的な対応を行っています。また、税関の業務継続という観点から、これまでの業務継続計画に加え、新型コロナウイルス感染症に対し必要な対策も速やかに講じてきたところです。しかし、今回の感染症流行は、世界全体の経済活動のみならず生活行動にまで大きな影響を与えており、感染症流行が終息した後、モノ、ヒト、カネの流れだけでなく、人々の行動、働き方に対する考え方等にも大きな変化が生じることも予想されます。今後は、対面でのやりとりが中心である税関相談等の業務方法、働きやすい環境を整備するという観点から導入してきたフレックスタイム制やテレワーク等の活用方法について再考するなど、新型コロナウイルス感染症流行による経済社会の構造的変化を見据えた新たな視点から、業務の高度化・効率化、更なる利便性の向上について取り組んでいくことが必要になると考えられます。このような新たな視点に十分留意しつつ、これからも、関税局・税関は、国民、納税者、更には未来世代の視点に立って、不断の検討を行っていきます。また、将来的に、先端技術の活用により税関業務が高度化・効率化していく中で、職員による「現物チェック業務」(貨物の現物確認を要する業務)や「事後チェック業務」(貿易関係事業者への立入調査を行う業務)等の重要性は変わらないものの、先端技術を使いこなすことにより、これらの業務負担を軽減しつつ、ワークライフバランスも踏まえた業務運営方法の企画・立案や先端技術活用の適切な計画・維持・管理が重要になっていくと考えられます。このため、税関業務の高度化・効率化を進めていく中で、そのような業務に注力していくことができるよう必要な人的リソースの育成を検討していきます。以上、スマート税関構想の実現に向けて各種の施策に着実に取り組み、必要な運用面・制度面における見直しも行っていきます。そして、社会の安全・安心に配意しつつ、モノ、ヒト、カネの流れを更に迅速化しストレスフリーなものとしていけば、新たな素材や製品等の様々なモノが、そして異業種や異文化の様々なヒトが、これまで以上に広く深く交流することが可能となります。そのような環境においては、新たな産業や価値観が創造され、活力ある経済と多様性を有する豊かな社会が実現するものと考えます。私たち関税局・税関は、一層安全で豊かな社会を実現させ、国民一人ひとりの幸せな未来を守るよう努めてまいります。【資料】税関HP(https://www.customs.go.jp/)スマート税関構想2020(本文)スマート税関構想2020(効果)スマート税関構想2020(概要)スマート税関構想2020(鳥瞰図)32 ファイナンス 2020 Aug.SPOT

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