ファイナンス 2020年8月号 No.657
32/90

はじめに税関は、不正薬物・銃砲・知的財産侵害物品等の密輸阻止やテロ行為の防止による「安全・安心な社会の実現」、輸入貨物に対する「適正かつ公平な関税等の徴収」及び通関手続の一層の迅速化による「貿易円滑化の推進」という三つの使命を果たし、貿易の健全な発展と安全な社会の実現に努めています。税関を取り巻く環境は大きく変化しており、この30年間で貿易額は約2.8倍、輸出入許可件数は約5.5倍等と貿易の拡大が進んでいます。また、時代が平成から令和にかわり、更なる貿易の拡大が進んでいる中、世界的に新型コロナウイルス感染症が流行、そして来年には東京オリンピック・パラリンピック、2025年には日本国際博覧会の開催が予定されるなど、税関を取り巻く環境は常に変化し続けています。このような環境変化の中、関税局・税関は、税関業務の高度化・効率化を進めるとともに、利用者への一層の利便向上を図り、20年後、30年後も国民の期待に応えられるよう取り組んでいく必要があります。また、将来における環境変化に対応していくためには、関税局・税関の職員一人ひとりが自らアイデアを出し、業務改善を考え、将来像について考えていく文化を醸成していくことが重要であると考えています。このため、関税局においては、引き続き税関の三つの使命を適切に果たすとともに、国民の視点に立って、税関手続等における利便性の向上を図るなどにより、貿易の健全な発展と安全な社会、そして豊かな未来を実現する世界最先端の税関を目指すことを目的とした税関行政の中長期ビジョン「スマート税関構想2020」を取りまとめました。1中長期的に予想される環境変化(1)モノの流れスマートフォンの普及やインターネット人口の増加により、越境電子商取引が更に拡大し、通販サイトでの購入増加による輸出入物品の小口化・個人化が進むと予想されます。また、交渉を進めている新たなEPA(Economic Partnership Agreement:経済連携協定)の締結により貿易拡大が見込まれます。(2)ヒトの流れ政府は2030年には訪日外国人旅行者数を6,000万人とする目標を掲げているほか、日本人が海外旅行に出かけやすい環境の整備等も含め、様々な取組が進められています。現在は、世界的な新型コロナウイルス感染症流行の影響で出入国者数は減少していますが、流行の収束後における動向に注視が必要です。(3)カネの流れ今後、暗号資産による貨物代金の支払いが一般化した場合、課税標準としての評価や、犯則調査における支払いの裏付けの立証が問題になります。また、政府を挙げてキャッシュレス化を推進しており、旅具通関においてクレジットカードやスマートフォンによる関税等の納税を可能とする必要があります。(4)社会構造の変化及び災害リスク等今後の日本の総人口は、生産年齢人口(15歳~64歳)も含め減少すると推計されている一方、様々な少子化対策、定年の引上げなどの動きもあり、これらによる社会構造の変化は地域経済等に影響するでしょう。また、テレワーク等の多様な働き方を可能とする環境整備、台風や地震等のリスクへの備えのほか、新型コロナウイルス感染症流行のような状況においても、税関は適切に業務スマート税関構想2020~貿易の健全な発展と安全な社会、そして豊かな未来を実現するために世界最先端の税関を目指します~関税局関税課税関調査室28 ファイナンス 2020 Aug.SPOT

元のページ  ../index.html#32

このブックを見る