ファイナンス 2020年8月号 No.657
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方に活用されている。‣モジュール4:統計情報管理・データソースの収集、加工、解析、公表に至るまでの一連の統計管理プロセスの改善を図るための統計関連のインフラの合理化、標準化及び自動化のための助言等を提供する。3運営委員会議長として運営委員会は、基本的に年1回開催され、ドナー国及びIMFが集い、D4Dを通じて行う政策の優先分野や対象国、あるいは実施方針等の戦略的ガイダンスを策定の上、年間の事業計画及び予算を承認する。その中でも議長は、ドナー国とIMF事務局(統計局)を橋渡しする役割を担い、運営委員会の開催時期、アジェンダや議決事項の調整を行うことになる。また、事業計画に予定されていない個別事案が生じたといった場合、IMF事務局と連絡を取り合い調整することもある。2020年4月15日、G20財務大臣・中央銀行総裁会議及びパリクラブにおいて、新型コロナウイルス感染症拡大による影響に対し、とりわけ保健・衛生面及び経済面で脆弱な最貧国の感染症対策と経済基盤の維持を図るため、最貧国の公的債務の支払を猶予する債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)が合意されたが、その実施過程では改めて債務の透明性向上の重要性が再認識されるとともに、D4Dがこの分野で更なる貢献を果たすことが期待されている(下記G7声明参照)。(参考)債務の透明性及び持続可能性に関するG7財務大臣声明(仮訳)(2020年6月3日)(抜粋)我々はDSSIにおいて債務の透明性に焦点をあてることを歓迎する。なぜなら、債務の透明性は債務持続可能性と経済成長にとって不可欠だからである。我々は、債務の報告を強化するというDSSIの受益国によるコミットメントを強く支持する。これにより、より良い情報に基づく投資判断を促進し、公的な説明責任を高め、長期の持続可能な開発をサポートすることとなる。我々は、国際通貨基金(IMF)と世界銀行グループが、債権者の参加、公的債務の開示、及び追加的な財政余地の利用を監視することを歓迎し、それらの結果の公表を期待する。DSSIを越えて、国際金融機関は、新たに生じつつある債務脆弱性に対処するためのIMFと世界銀行による「様々な角度からのアプローチ」の枠組みに示されているように、債務国が債務の透明性及び持続可能性を促進するための取組を改善するのを助ける重要な役割を持つ。我々は、外部の債権者の内訳及びより完全な偶発債務、国有企業債務、担保付貸付の捕捉を含め、債務持続可能性分析において利用される債務データの公表の強化に向けて、国際金融機関、債務者、及び債権者が協働することを求める。国際金融機関は、公的債務の開示の強化、必要に応じた非譲許的借入の制限、債務脆弱性の低減に向けた債務国の取組を促し支援することができる。我々はまた、国際金融機関が公的債務の脆弱性を低減させ、債務管理能力を強化し、債務報告の取組を向上させるための技術支援を提供する努力を強化することを期待する。この点に関し、我々は、世界銀行とIMFの債務管理ファシリティ第3フェーズ及びIMFの決定のためのデータ基金への新たな支援を歓迎する。そのような状況下で、2020年6月、新型コロナウイルス感染症の影響によりビデオ会議で開催することになった本年の運営委員会では、事前の資料共有や意見・質問の提出等の工夫により効率化を図りつつ、低所得国の公的債務残高の高まりを受けて、公的統計の債務透明性の重要性を参加者間で確認するとともに、経済活動の正常化への見通しが難しい中、各国のニーズに応じて柔軟に能力開発の提供を可能とするための予算枠の設定や事業計画の変更手続きの簡略化等を、議長として提案、承認された。ビデオ会議の最後では、次期議長であるオランダに無事に襷を渡し、IMFや参加国から謝意を伝えられ、国際場裡での日本のプレゼンスを示す貴重な機会になった。このようなプレゼンスの蓄積を活かし、今後も債務の透明性向上、債務持続可能性の確保に向けた国際的議論のリードに繋げていくこととしたい。また、D4Dを通じて統計に関する途上国支援を始めた経験として、経済・金融統計の整備と普及には、被支援国の強力なオーナーシップとシステミックな改革努力が必要であり、また、一朝一夕で解決するものではなく、腰を据えた取り組みが必要である点を今後の教訓として強調したい。 ファイナンス 2020 Aug.27IMFテーマ別基金(決定のためのデータ基金)運営委員会議長を終えて SPOT

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