ファイナンス 2020年8月号 No.657
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広げるといった取組を重点項目として掲げた。こうした方向性は、債務透明性の向上を通じた債務持続可能性の確保という日本の重視する政策目標の実現にも資することから、日本は、本基金への貢献を決めトップ・ドナーとなり、運営に積極的に関与すべく、2019年1月の運営委員会では、議長に立候補し、選任された。また、同委員会では債務関連の優先度を上げることも合意した。D4Dでは以下の4つのモジュールにより支援を実施してきている。なお、2020年5月以降の18か月間の事業計画では、オンサイト・オフサイト(リモート)を組み合わせた支援を展開していく予定である。‣モジュール1:データの質向上・本モジュールがD4Dの全体活動の3分の2弱を占める。マクロ経済統計の柱である(実質部門、対外部門及び政府財政部門の)3つの統計について、国内法令の整備等を通じたデータソースの収集強化、公表頻度の改善を支援することで、より質の高いデータ提供を慫慂する。*2) 利用にあたっては、こちらのURLを参照されたい(https://www.edx.org/school/imfx)‣モジュール2:金融市場アクセスに関するサーベイ(FAS:Financial Access Survey)・当局及び分析者に189か国をカバーする金融包括データベースを通じて質の高いデータを提供するため、FASを改善し、その対象を、男女別統計や金融アクセスに係るコスト等、新たな分野に拡大するほか、SDGsの金融包括指標を測定するためのモニタリング基盤を提供する。‣モジュール3:オンライン・ラーニング・IMFのオンライン・ラーニングは2014年に立ち上げられ、無償で、誰でも、何時でもマクロ経済の研修を受けられる*2。D4Dはその中でも統計分野に焦点を当てたコース開発と運営を支援しており、PSDSのコースを2019年9月に立ち上げ、2020年末までにGFS及び国際収支・国際投資ポジション統計(BOP-IIPs)、また2021年末までに国民経済計算コースの開始を予定している。複数言語で受講でき、政府当局職員を中心に多くのIMF・世銀による債務脆弱性対処のための取組の着実な実施。債務国の能力構築などを図る。•IMF・世銀は、複数年単位の様々な取組をまとめた両機関の戦略的アプローチである、「様々な角度からのアプローチ(MPA: multi-pronged approach)」を推進中。•同アプローチの下、両機関は、1.両機関の債務分析ツールの強化2.債務透明性向上の取組(能力構築支援や債務データの改善等)3.債務管理能力強化の取組(債務管理強化のファシリティ立ち上げ等)4.両機関の債務関連ポリシー見直し(低所得国による非譲許的借入の累積を制限する政策の強化等)。•G20はこれら取組の成果・進捗を確認。両機関はこうした取組を引き続き着実に実施していく。公的債権者民間債権者民間債権者による「債務透明性の原則」の策定。民間ファイナンスの透明性向上を図る。•国際金融協会(IIF: Institute of International Finance)によるイニシアティブ。民間金融機関の任意ベースの透明性原則。•民間金融機関が、途上国の公的機関と締結する融資等契約の情報(例: 債務者名、金額、通貨、償還条件、金利など)を開示することを求める。低所得国の債務の持続可能性と透明性(G20の取組)債務透明性の向上債務持続可能性の確保債務国各国による貸付実務の自己評価。公的部門の持続可能な貸付の定着を目指す。•「G20持続可能な貸付に係る実務指針(OGSF: Operational Guidelines for Sustainable Financing)」に照らした自己評価。(注)「OGSF」: 持続可能な貸付の定着を目的として、債権・債務国双方が取り組むべき事項を整理したG20の指針。2017年3月G20財務大臣・中銀総裁会議にて歓迎。•G20の15メンバー、非G20の5ヵ国が自己評価に参加。•IMF・世銀が各国の自己評価結果を取りまとめ、改善点の指摘や見習うべき点をハイライト。(注:個別の国名や個別の評価結果は非公表。)•低所得国の債務問題に対処するため、債務国及び官民の債権者双方による協働の取組が行われているところ。26 ファイナンス 2020 Aug.SPOT

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