ファイナンス 2020年8月号 No.657
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用保証協会による保証の認定を受けて実行した融資(制度融資)及び(2)これに準じるプロパー融資の適格融資の残高を限度に、共通担保を担保として、金融機関へ資金供給を行う制度を実施している(5月22日の臨時金融政策決定会合で導入を決定)*8。対象先には系統会員金融機関等も含まれ、また、利用残高に相当する当座預金に+0.1%が付利される。なお、本措置は、6月24日から上記(b)の新型コロナ対応金融支援特別オペと一体的に運用(オペ)されている。(ii)金融市場安定のための円・外貨供給(a)国債のさらなる積極的な買入れ4月27日の金融政策決定会合では、債券市場の流動性が低下している中で、緊急経済対策により国債発行が増加することの影響も踏まえ、債券市場の安定を維持し、イールドカーブ全体を低位で安定させる観点から、当面、長期国債・短期国債ともに、更に積極的な買入れを行うこととした。併せて、従来の金融市場調節方針で示していた長期国債の買入れ額について、「保有残高の増加額年間約80兆円をめど」から「上限を設けず必要な金額」と変更した。(b)米ドル資金の流動性供給の拡充カナダ銀行、イングランド銀行、日本銀行、欧州中央銀行、米国連邦準備制度(FED)及びスイス国民銀行の主要6中銀で、米ドル・スワップ取極を通じた流動性供給を拡充するための協調行動として、米ドル調達市場の円滑な機能を支援するための適切な期間、適用金利の引き下げ、資金供給(オペ)頻度の増加等を継続して実施することとしている(協調行動については3月16日及び3月20日に公表)。(iii)ETF・J-REITの積極的な買入れ3月16日の金融政策決定会合では、当面は、ETFについては年間約12兆円、J-REITについては、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限(従来の倍)に、積極的な買入れを行うとされた。上記の日本銀行の措置は、3月以降、着実に実施されてきている(図17 日銀による対応状況(令和2*8) 新たな資金供給手段は、5月22日の導入時、緊急経済対策における実質無利子・無担保融資を中心とする適格融資として約30兆円+αの資金が供給され得るスキームであり、その後、実質無利子・無担保融資の規模の拡充(約28兆円)を含む第2次補正予算成立(6月12日)に伴い、本資金供給の枠も拡大した。年3月以降))。米ドル資金供給は、世界的に金融資本市場が緊張を高めた3月半ばにドル資金需要が急激に高まったことと相まって、主要中銀の協調行動を受けたドル資金供給オペの拡充(適用金利の引下げ等)の直後から利用が増加したが、4月半ば以降は落ち着きがみられる。CP・社債等の買入れは、5月、6月と、月2兆円以上の買入れが行われ、市場における安心感から金利の上昇抑制につながったとみられるほか、CP・社債の発行残高は高い伸びとなっている。新型コロナ対応金融支援特別オペ(実質無利子・無担保融資等の残高を上限とする資金供給を含む)については、導入直後の3月に高い需要がみられ、その後、対象の拡充等を行った後の5月に利用が拡大した。このような措置が、企業等の資金繰りのニーズ等に対応してきていることが伺える。(2)政府・日本銀行の連携新型コロナウイルス感染症が経済及び金融資本市場に与える影響に対して、政府及び日本銀行は様々な取組みを行うとともに、国難とも言える厳しい経済情勢に直面し、緊密に連携してきた。小生は日本銀行の金融政策決定会合の参加者であったが、中銀の独立性を尊重しつつ、日常的に日本銀行の事務方と密接な意思疎通と情報共有を図ってきたところ、カウンターパートに敬愛する優秀な日本銀行幹部が揃い、強い信頼関係が維持されたことは幸運であった。さて、政府は、前述の通り、中小・小規模事業者や中堅企業・大企業の資金繰り対策と事業の継続を強力に支援すべく、4月20日に決定された緊急経済対策で、政策金融機関に加え、民間金融機関による実質無利子・無担保の融資を受けることができる制度の創設等、資金繰り支援に万全の措置を講じてきた。これを受けて、日本銀行では、4月27日の金融政策決定会合において、政府の緊急経済対策等における資金繰り支援制度も踏まえた金融機関への新たな資金供給手段の検討を早急に行うこととされ、その後、5月22日には、臨時の金融政策決定会合を開催し、政府が導入した実質無利子・無担保での資金繰り支援等22 ファイナンス 2020 Aug.特 集

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