ファイナンス 2020年8月号 No.657
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郵送によって行われる日もあった。また、全国に520機関、2万店舗以上を展開している、全銀協等に加盟する民間金融機関との連携にも取り組んだ。民間金融機関に日本公庫への申込書類の取次を依頼し、例えば、事業者がセーフティネット保証や日本公庫の融資を受けられるよう、民間金融機関の担当者が申請書類の作成をサポートするほか、セーフティネット保証に必要な認定取得のため、市町村の窓口に同行するといった協力を得ている。加えて、民間金融機関が、日本公庫の融資までのつなぎ融資を実施するとともに、5月からは、史上初めて民間金融機関も実質無利子での融資の実施を開始し、事業者の相談窓口を大幅にした。更に、更なる体制強化のため、国税局・財務局から日本公庫への職員の応援派遣を行い、財務省としても、事業者の資金繰りを支援する体制を構築している。(4)資金繰り支援に関する総理・財務大臣談話等麻生財務大臣からは、日本公庫等に対して、事業者の実情に応じた対応に万全を期すよう、累次にわたって要請を行った。3月6日には、きめ細かく実態把握を行い、適切かつ迅速に事業者の資金繰り支援に取り組むこと、元本・金利を含めた返済猶予等の条件変更について、迅速かつ柔軟に対応すること等を内容とする大臣談話を公表した。3月16日には、年度末の金融繁忙期が控えていることも踏まえ、麻生財務大臣が官民の金融機関と面会し、事業者の実情に応じた十分な対応に万全を期して頂くよう、改めて要請した。総理からも、4月には、迅速な融資実行や、既往債務の返済猶予など、貸付条件の変更について、迅速かつ柔軟な対応を要請した。また、ゴールデンウイーク直前には、事業者の資金需要に迅速に対応できるよう、感染予防の観点からも、インターネットや郵送も活用しつつ、審査の簡素化・迅速化に取り組むとともに、連休中も必要な店舗を開くなど、事業者からの相談や審査に対応できる態勢を整備すること等を改めて要請した。更に、第2次補正予算案提出後、6月10日には、・既に融資を実施した事業者から再度の融資相談を受ける場合に、今般の補正予算案における拡充内容も踏まえ、丁寧な対応を行うこと・各種給付金の支給等までの間に必要となる資金も含め、事業者の実情に応じ、迅速かつ積極的に支援に取り組むこと等を要請している。日本公庫では、こうした取組みの結果、順調に融資申込みの受付・審査・融資決定を行う体制を整え、既に申込みの約9割が融資決定に至るなど、感染症の影響を受けた事業者の資金繰りを支えている。また、日本公庫では、この期間、それまで取引のなかった新規の顧客への融資が4割を占めるなど、危機時におけるセーフティネットの役割を大いに発揮してきたと考えている。6日本銀行との連携(1)日本銀行の対策本年2月下旬から新型コロナウイルス感染症が欧米諸国にも拡大すると、世界経済の不透明感が強まり、内外金融資本市場は急激に不安定化した。こうした状況を受けて、3月2日に、日本銀行の黒田総裁は談話を公表し、潤沢な資金供給と金融市場の安定確保に努めていく方針を明確にした上、同日、臨時の資金供給オペを行った。3月16日には、主要中銀が協調して米ドル資金供給を拡充するなど、この時期、日本銀行を含む主要中銀にとって、金融市場の安定を確保し、急激なショックに対して企業の当面の資金繰りを支援することが急務であった。経済活動が需要・供給の両面から寸断され、企業の資金繰り支援は喫緊の課題であったが、必要な支援の規模や期間については、感染拡大の規模や持続性とも関係し、不確実性が大きいと考えられた。日本銀行は、3月16日、CP・社債等の買入れの増額や、新型コロナウイルス感染症にかかる企業金融支援特別オペを導入するなど、迅速に企業金融支援に踏み切った。緊急事態宣言が発出された後、日本銀行は、4月27日にも、金融機関や企業等の資金調達の円滑確保に万全を期すため、新型コロナウイルス感染症にかかる企業金融支援特別オペの拡充等を実施し、その名称についても「新型コロナ対応金融支援特別オペ」と改めた。5月22日には、政府の緊急経済対策における実20 ファイナンス 2020 Aug.特 集

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