ファイナンス 2020年8月号 No.657
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資等を行っている。新型コロナウイルス感染症の影響により民間だけでは支援が難しい分野(バイオ、宇宙、素材等)や長期・大規模な投資が必要となるグロースステージのベンチャー企業投資、国際競争力強化に向けた大規模な事業再編投資等へのリスクマネー供給が滞らないように、第2次補正予算において政府保証枠を1.5兆円拡大し、2.8兆円の事業規模を確保している。(iii)中小企業基盤整備機構(中小機構)中小機構では、官民連携のファンドを通じた支援を行っており、第2次補正予算において600億円の予算を計上し、750億円の事業規模を確保している。新たに中小企業経営力強化支援ファンドを創設し、地域の核となる事業者が倒産・廃業することがないよう、出資・経営改善等により、事業の再生とその後の企業価値の向上をサポートするなど、成長を全面的に後押しすることとしている。また、中小企業再生ファンドでは、既存の18ファンドに加え、空白となっている地域を中心に新たなファンドを組成し、過大な債務を抱えた中小企業の再生を図るために、債権買取りや出資等を行い、経営改善までのハンズオン支援を実施することとしている。(iv)株式会社日本貿易保険(NEXI)新型コロナウイルス感染症の流行により、日系企業の海外現地子会社の経営が悪化し、運転資金が途切れないよう手元流動性を確保する必要性が増している一方で、世界的に経済的リスクが顕在化したことで、資本市場は、資金供給に慎重になりつつある。こうした状況を踏まえ、株式会社日本貿易保険(NEXI)では、資金繰りが悪化している海外日系子会社に対して民間金融機関が行う融資のリスクを引き受けられるよう、第2次補正予算において政府保証枠を拡充し、保険引受枠を1.5兆円設定している。5企業支援の迅速化(1)相談・融資体制の強化1月下旬に新型コロナウイルス感染症に関する経営相談窓口を設置して以降、日本公庫には事業者から多くの融資相談が寄せられており、既に約60万件、9兆円を超える融資決定を行っている。これは、日本公庫が152支店、職員約7,000名という体制で、年間約30万件3.5兆円の事業資金の融資を行っていることを考慮すると、平時とは比較にならないスピードとなっている。具体的には、日本公庫においては、相談・審査要員の増員に努めており、(1)本店等から支店に対して600名以上の応援派遣、(2)融資相談の多い国民生活事業部への他部門職員の応援派遣、(3)OB職員約100名の臨時採用、(4)年度末の定期人事異動の一時凍結、といった対策を講じている。また、事業者からの相談・申込みに確実に対応できるよう、相談電話回線を大幅に増強(8回線⇒50回線)するとともに、休日においても電話相談に対できる体制を整えている。(2)審査の効率化こうした体制の整備に加え、資金繰りに苦しむ事業者に迅速な融資ができるよう、審査プロセスの大幅な効率化に取り組んでいる。例えば、従来の融資審査では事業者に作成・提出を求めていた資金繰り表を原則不要とするなど、提出書類を簡素化するとともに、実地調査を省略している。また、決裁権限を現場に委譲するとともに、既に取引がある事業者は、極力面談を不要とし、電話等での調査を推進している。こうした取組みにより、通常であれば2週間以上審査に要するところ、既に取引のある事業主からの少額融資の申込みについては、極力それよりも短い期間で融資決定できるよう審査の迅速化を講じている。(3)更なる取組み感染症の拡大を受けて、4月には日本公庫の職員からも感染者が出るなど、官民の金融機関で多くの感染が確認された。こうした中、(1)支店がクラスター源となることを防止するとともに、(2)事業者からの融資申込みに、迅速かつ効率的に対応できる体制を構築することが課題となった。日本公庫においては、接触機会削減の要請も踏まえて、支店における対面での融資申込みから、郵送・インターネットによる申込みへの誘導を行うことで、事業主と職員の接触機会を抑えつつ、審査時間を確保して融資手続きの迅速化を図った。その結果、緊急事態宣言下において、約8割の申込みがインターネット・ ファイナンス 2020 Aug.19新型コロナ感染症対策に係る資金繰り支援について 特 集

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