ファイナンス 2020年8月号 No.657
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域が限定的であること等を踏まえて、今年5月にその期限を5年間延長しており、中長期的な目線で支援することを可能としている。*7本ファンドでは、特定投資業務を活用して、感染症の影響を受けている中において、足下では提供できていない事業や新たな投資等の新事業開拓や異なる事業分野を有機的に連携する異分野連携等により、生産性・収益性の向上を目指す事業者を支援することとしている。新型コロナウイルス感染症収束後の日本経済のV字回復のためには、感染症により社会構造が変容したことによって生じる新たな社会ニーズや事業を支援することが重要であり、例えば以下のような事業への投融資を想定している。・サプライチェーンの寸断により生産拠点の再配置を計画する製造業の事業者同士が、資本提携による合従連衡を実施する際に、優先株や普通株等を供給・感染症による影響を受けた宿泊事業者が、これまで取り込めなかった需要を開拓すべくリノベーション投資を新たに実施する際に、劣後ローンを供給・ポスト・コロナ時代を見据えた新しい行動様式(テレワークやオンライン診療、オンライン教育等)のためのインフラ投資(5G投資やデータセンター、拠点分散)を実施する際に、資本性資金を供給(3)金融機能の強化現在、日本の金融システムは安定しており、その健全性に問題はないが、金融機関においては、前述の措置や政府からの要請を踏まえ、今後も引き続き、しっかりと中小企業等を支え、経済の再生を図っていくことが求められている。そのため、政府としては、「将来を見据えての先手の対応」として、金融機関に対する国の資本参加制度である金融機能強化法の見直しを行うこととした。具体的には、(1)現在令和3年度末までとされている国の資本参加の申請期限を、4年間延長して令和7年度末までとし、併せて、(2)新型コロナウイルス感染症等の影響を受けた金融機関が国の資本参加を受*7) これは、衆参両院の財金委員会等でのご審議を経て、令和2年5月15日の「株式会社政策投資銀行法改正案」の可決・成立によって可能となった。事務方責任者として改めて感謝申し上げたい。国会質疑において数十回の答弁の機会を頂いたが、中でも、有事における政策金融機関による企業継続、雇用維持等への貢献への強い期待と要請にかかる御下問が多かった。コロナ禍により、政府系金融機関の重要性が再認識された感があるが、民業補完原則のもと、平時において、民間の自律的発展を阻害してはならず、民間だけでできない分野に焦点を当てる一方、危機時において国民経済を守る極めて効果的な前衛として、迅速、十分、かつ適切に対応できる体制の維持強化が必要という含意も見出しうるのではないか。けようとする場合に、経営責任が問われないことを明確化するとともに、収益性や効率性の向上についての具体的な目標を求めない等の特例を設けた。更に、令和2年度第2次補正予算において、政府保証枠を12兆円から15兆円に増額している。(4)ファンド等を通じた支援令和2年度2次補正予算では、資本性資金による支援として、日本公庫・政投銀等による資本性劣後ローンに加えて、出資等やファンドの拡充として、6兆円規模の支援を措置しており、前述の政投銀のリバイバルファンドやJICによる新事業開拓や事業再編など、成長に向けた投融資枠の拡充や、REVICや中小機構による再生支援等を実施することとしている。(i)地域経済活性化支援機構(REVIC)REVICでは、感染症の影響で財務基盤が一時的に悪化した地域の中核企業等の経営改善等のため、事業再生の枠組みを活用した支援や、地域金融機関と連携したファンドを通じた資本性資金の供給等を行うこととしている。REVICは、支援・出資決定期限が令和2年度末となっていたが、本年6月に法改正を行い、支援・出資決定期限と業務完了期限をそれぞれ5年間延長した。また、第2次補正予算において、REVICが金融機関等から資金調達を行う際の政府保証枠を1兆円から2兆円に拡充し、全体で2.5兆円の事業規模を措置するとともに、新型コロナウイルス感染症の影響により経営環境が悪化した事業者を投資対象とするべく、既存の災害復興支援ファンド等の投資対象や対象地域、存続期限に関する規約変更等を行っている。(ii)産業革新投資機構(JIC)JICでは、オープンイノベーションによる産業競争力強化を支援するため、認可ファンドを通じて、自らの経営資源以外の経営資源を活用し、高い生産性が見込まれる事業や新たな事業の開拓を行う者に対する出18 ファイナンス 2020 Aug.特 集

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