ファイナンス 2020年8月号 No.657
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0.5%の利下げを実施することとしている。なお、中堅・大企業向け支援では資金需要が大きく、メインバンク等による協力を得ることも重要であることから、民間金融機関から政投銀等による資金供給と同額以上の支援を得ることを条件とし、民間金融機関と協調して事業者を支えることとしている。(図14 政投銀等による中堅・大企業向け危機対応業務(事業規模拡充・資本性劣後ローンの追加))過去の支援策と比較しても、東日本大震災の際に措置した資本性劣後ローンは、企業の規模や信用リスク等にかかわらず金利が一律であったが、今回は、柔軟な貸付条件とすることにより、利便性を高めている。(iii)政投銀による新型コロナリバイバル成長基盤強化ファンド新型コロナウイルス感染症によって内外経済が甚大な影響を受ける中で、企業の新しい事業への投資意欲は減少しており、成長資金市場の大幅な収縮が懸念されている。こうした中、感染症による影響からの回復・成長を目指し、融資から更に一歩踏み込んで、資本性資金(エクイティ・メザニン)を供給するため、政投銀の特定投資業務の一環として、「新型コロナリバイバル成長基盤強化ファンド」を創設し、4,000億円の投資規模を措置している。(図15 新型コロナリバイバル成長基盤強化ファンド)政投銀の特定投資業務は、我が国におけるリスクマネー供給が不足していることを背景に、地域活性化又は企業の競争力強化に資する成長資金の供給を実施するため、平成27年に導入された制度であり、令和2年3月末までに計100件7,171億円の投融資決定実績となっている。例えば、地域活性化として、地方企業の海外展開案件や、民間金融機関や事業者を束ねたファンドを通じた広域観光振興など業界を繋いで支援する案件、競争力強化として、航空宇宙や水素等のトラックレコードがなく民間が投資しにくい新分野への案件等を手掛けている。なお、投資決定期限が令和2年度末、業務完了期限が令和7年度末までの時限的な措置であったが、これまでの実績や民間による投資領図13 日本政策金融公庫・商工中金による中小企業向け資本性劣後ローン日本政策金融公庫・商工中金による中小企業向け資本性劣後ローン•新型コロナウイルス感染症の影響により、キャッシュフローが不足するスタートアップ企業や、一時的に財務状況が悪化したものの持続可能な企業に対して、長期間元本返済がなく、民間金融機関が自己資本とみなすことができる資本性劣後ローンを供給することで、民間金融機関や投資家からの円滑な金融支援を促しつつ、事業の成長・継続を支援。【主な貸付条件】•融資対象:新型コロナウイルス感染症の影響を受けている、①スタートアップ企業、②財務状況が悪化したものの持続可能な企業等•貸付限度:中小事業:最大7.2億円(別枠)、国民事業:最大7,200万円(別枠)•貸付期間:5年1か月、10年、20年(期限一括償還)•金利設定:当初3年間0.50%(中小事業)4年目以降黒字:2.60~2.95%赤字:0.50%○新型コロナウイルス感染症の影響を受けている中小企業に対して、資本性資金を供給することにより、スタートアップの事業の成長や持続可能性のある事業を下支えし、廃業を防ぐとともに、V字回復に向けた「基盤強化」を図る。○具体的には、一時的に財務状況が悪化した中小企業等に対して、日本政策金融公庫及び商工組合中央金庫(危機対応業務)等が、民間金融機関が資本とみなすことができる長期一括償還の資本性劣後ローン制度を創設。資本性劣後ローン<スキーム図>日本政策金融公庫政府出資金等商工中金民間金融機関利子補給等資本性劣後ローン中小企業・小規模事業者協調融資資本性劣後ローン事業規模:1.3兆円16 ファイナンス 2020 Aug.特 集

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