ファイナンス 2020年8月号 No.657
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から、融資限度は設けず、あらゆる資金需要に対応できるようにしている。金利は、金融情勢や調達コスト等を勘案して政投銀等が定めることとしているが、中小企業に当てはまらない中堅企業への支援を拡充する観点から、中堅企業に対しては当初3年間▲0.5%の利下げを行うこととしている。なお、ツーステップ・ローンは、国の財政融資を受けた日本公庫が同じ金利で政投銀等に対して資金供給を行う仕組みであり、政投銀等は低利で資金調達することが可能となっている。実施状況は、3月19日の制度開始から6月末までに3兆円の申込みがあり、既に1.6兆円の融資を行っている。東日本大震災の際の危機対応融資の実績が発災後半年間で約2兆円であったことと比べても、中堅・大企業からの資金ニーズが大きい状況となっている。(2)政策金融II(資本性資金供給)(i)日本公庫等による中小企業向け資本性劣後ローン日本公庫等による中小企業向け資本性劣後ローンは、新型コロナウイルス感染症の影響により、キャッシュフローが不足するスタートアップ企業や、一時的に財務状況が悪化したものの持続可能な企業に対して、長期間元本返済がなく、民間金融機関が自己資本とみなすことができる資本性劣後ローンを供給することで、民間金融機関や投資家からの円滑な金融支援を促しつつ、事業の成長・継続を支援するものである。(図13 日本政策金融公庫・商工中金による中小企業向け資本性劣後ローン)具体的な融資限度額は、日本公庫国民生活事業の場合は7,200万円(別枠)、中小企業事業の場合は7億2,000万円(別枠)となっており、既存の資本性ローンと比較しても高い上限額が設定されている。また、利率についても、融資後3年間の金利を利益の有無にかかわらず低利を適用する(日本公庫国民生活事業の場合は、1.05%、中小企業事業の場合は、0.5%)ほか、4年目以降の利益が出た場合の利率も、既存の制度と比較して低い利率となっている。なお、東日本大震災の際に措置した劣後ローン制度と比べても、貸付期間を「5年1か月」「10年」及び「20年」(いずれも期限一括償還)から選択可能とするなど、柔軟な制度設計としている。前述のとおり、資本性劣後ローンは金融機関が負債ではなく自己資本とみなすことができるため、民間金融機関から追加融資を受けやすくなることが期待できる。金融庁の監督指針のQ&Aにおいても、日本公庫等の資本性劣後ローンは資本性借入金とみなして取り扱うことができる旨が明記されている。(ii)政投銀等による中堅・大企業向け資本性劣後ローン中堅・大企業向けには、資本性劣後ローンを危機対応融資のメニューに追加し、5兆円の融資規模を確保している。個別の貸付条件については、事業者のニーズに合わせて政投銀等が柔軟に決定することとなるが、一定の資本性が認められるために、例えば、(1)法的破綻時の返済順位が劣後し、(2)長期一括償還で、(3)業況悪化時等に利払いを任意に繰り延べられる等の商品性になるものと考えられる。また、通常融資同様に、中堅企業向けについては当初3年間、▲図12 実質無利子・無担保融資のしくみ貸付出資金国日本公庫中小企業小規模事業者個人事業主信用保険信用保証信用保証協会中小機構都道府県等実質無利子・無担保融資民間金融機関全国信用保証協会連合会補助金保証料補助補助金補助金利子補給利子補給 ファイナンス 2020 Aug.15新型コロナ感染症対策に係る資金繰り支援について 特 集

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