ファイナンス 2020年7月号 No.656
7/86

政策金融と補助金は 3つの点で異なる政策金融は、政策的必要性が高いものの、リスクの適切な評価が難しい、あるいは高いリスクを許容する必要があるなど、民間金融機関のみでは十分な対応が困難な分野において民間金融を補完する投融資を行ない、政策目的を達成することを目的としている。では、政策金融と補助金はどこが異なるのか。一つ目は、政府の信用力を活用して収益事業(企業)に投融資し、そのリスクに見合ったリターン(成長)を求めること。二つ目は、企業にとっては投融資を受けることがゴールではなく、その資金を活用して事業を行ない、収益を上げ、投融資の償還を行うことがゴールとなること。三つ目は、国民負担となる税金の利用を極力抑え、市場経済の力を活用し、政策目的の達成を目指すことだ。政策金融の実行は、政府系金融機関が担っているが、平成20年の政策金融改革により、政府系金融機関の在り方が見直され、現在は5つの機関が活動をしている(図表2)。例えば、日本政策金融公庫(日本公庫)は、国際的な金融不安や経済収縮、地震・台風などの被害が発生した場合には、セーフティネット関連融資を実行することで、危機時のセーフティネット機能を果たしている他、企業のライフステージに応じた支援として、創業期には、新規開業資金、女性若者/シニア起業家支援資金、成長期には新事業育成資金、海外展開・事業再編資金などの制度を用意している。平成元年以降に日本公庫との取引を経て、その後に株式公開を果たした企業は、724社に達し、東京証券取引所のマザーズ、ジャスダックに上場している企業の約4分の1に日本政策金融公庫との取引履歴があることから、政府系金融機関による創業・成長期の企業への支援が一定の成果を生んでいると考えられる。また、政策金融の推進にあたって、地域における金融機能の高度化や成長資金の供給促進を図り、企業・経済の持続的成長等に貢献する観点から政策金融と民間金融との連携・協調を促進することが重要である。このため、財務省としても、全国の財務局を通じて地域金融機関から日本公庫との連携事例を収集の上、同省HPで公表したり、民間金融機関と関係省庁で政策金融に関する意見交換会を開催する等の取組みを行っている。図表2●政府系金融機関の概要名称設立主な業務資本金貸付残高従業員数(株)日本政策金融公庫(JFC)2008年●中小企業・小規模事業者向け業務●危機対応円滑化業務4.3兆円(注1)17.0兆円7,364名(株)国際協力銀行(JBIC)2012年●海外資源の開発や国際競争力の向上等のために必要な出融資1.8兆円13.2兆円616名沖縄振興開発金融公庫1972年●沖縄における地域限定の出融資0.1兆円0.9兆円215名完全民営化が予定されている政府系金融機関(株)日本政策投資銀行(DBJ)2008年●長期の事業資金供給や金融機能の高度化等に資する出融資●主に中堅・大企業向け危機対応業務1.0兆円12.5兆円1,195名(株)商工組合中央金庫2008年●中小企業等協同組合の構成員等に対する出融資●主に中小企業向け危機対応業務0.2兆円8.3兆円3,810名(注1)日本公庫の事業ごとの内訳:国民生活事業7.1兆円、中小企業事業5.2兆円、農林水産事業3.1兆円、危機対応円滑化業務等1.4兆円(注2)資本金は商工組合中央金庫を除き全額政府出資。商工組合中央金庫は資本金2,186億円中1,016億円が政府出資。国際協力銀行、日本政策投資銀行及び商工組合中央金庫の「資本金」、「貸付残高」は単体決算ベース。※令和2年3月末時点民間金融だけでは難しい分野で投融資を実施して政策を実現政策金融の役割 ファイナンス 2020 Jul.3新型コロナウイルス感染症にも素早く対応民間金融機関と協調して企業を支援する政策金融特集

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る