ファイナンス 2020年7月号 No.656
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外国人材受入れに関しての政策的対応・これまでは、人手不足を短期滞在の外国人で補ってきたが、企業によっては、長期で多様な業務を担う外国人材のニーズも拡大している(図表7)。また、外国人の増加により、制度と実態の乖離から生じる問題や、地域社会における生活面の問題が指摘されることが多くなっている。・こうした状況を踏まえて、一定の専門性等を有し即戦力となる外国人材を広く受け入れるため、技能実習よりも業務範囲が広い在留資格「特定技能」(1号は通算5年、2号は期限なし)が創設された(図表8)。・それに伴い、外国人材の適正・円滑な受入れに向けた取組みや、共生社会実現に向けた環境整備を推進する観点から、法務省の外局として「出入国在留管理庁」の設置や、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」が策定され、共生社会実現に向けて目指すべき方向性が示された(図表9)。図表7  外国人材受入れ企業による 行政への要望(n=500)とくになしその他外国人材の資格習得の支援(運転免許など)その他在留資格の在留期間の緩和留学生の労働時間週28時間上限の緩和外国人材活用の事例紹介外国人材の受け入れ枠(人数)の拡充外国人材活用に関する相談窓口などの拡充外国人材活用セミナー・説明会の開催特定技能の在留期間の緩和専門的・技術的分野の在留資格の在留期間の緩和受け入れ可能業種・職種範囲の拡充技能実習の在留期間の緩和外国人の生活支援政策の推進日本語教育研修のコスト支援外国人受け入れのコスト支援在留資格の取得・変更などの手続きの簡素化4025150510203035(%)図表8  就労が認められる在留資格の 技能水準「高度専門職(1号・2号)」「教授」「技術・人文知識・国際業務」「介護」「技能」等「特定技能2号」「特定技能1号」「技能実習」専門的・技術的分野非専門的・非技術的分野これまでの在留資格新たに創設された在留資格図表9 共生施策(例)○外国人との共生社会の実現に向けた意見聴取・啓発活動等EX:国民及び外国人の声を聴く仕組みづくり「『国民の声』を聴く会」等で幅広い関係者から意見を継続的に聴取啓発活動の実施各種人権啓発活動を実施○外国人材の円滑かつ適正な受入れの促進に向けた取組EX:特定技能外国人の大都市圏その他特定地域への集中防止策等地域における就労を希望する外国人材と企業のマッチング支援悪質な仲介業者等の排除関係機関の連携強化による悪質な仲介業者等の排除の徹底と入国審査の厳格化○生活者としての外国人に対する支援EX:暮らしやすい地域社会づくり一元的相談窓口に係る地方公共団体への支援拡大等、外国人共生センター(仮称)の設置適正な労働環境等の確保安全衛生教育教材の多言語化、ハローワークにおける多言語対応の推進等○新たな在留管理体制の構築EX:在留資格手続の円滑化・迅速化オンライン申請の対象の拡大、在留カードとマイナンバーカードの一体化の検討不法滞在者等への対策強化関係機関の連携強化による不法滞在者排除の徹底、有効な送還方法等のあり方や法整備を含む措置の検討持続可能な社会に向けて・これまでは、外国人はもっぱら短期滞在が前提となっており、定住者等が多くいる自治体を除けば、共生政策は重要な課題とは位置付けられていなかった。実際、多くの自治体では「外国人に対する情報提供」や「医療現場での対応」、「予算・人員」での課題を挙げており、受入れ体制の整備が遅れていることがわかる(図表10)。・また、外国人材受入れに関しては採用後のケアが重要という声がある中で、企業が外国人の生活支援を特に行っていない割合は4割強を占めており、企業サイドの更なる支援が期待される(図表11)。・中長期で見れば、若年労働者が減少する日本は、外国人材に依存せざるを得ない。今後は、従来のような特定の国籍の外国人だけでなく、多様な国籍の外国人の増加や滞在期間の長期化が見込まれるため、共生に向けた本格的な取組みが必要であろう。日本人と外国人が安心して安全に暮らせる持続可能な社会の実現に向けて、官民による努力を期待したい。図表10  現在の多文化共生施策の課題(都道府県、2017年、n=31)地域での担い手・リーダーの養成・育成外国人住民の社会参画の促進および活用外国人住民と日本人住民とのコミュニケーション労働・就労に関連する問題への対応医療現場での対応学校現場での対応防災を含む外国人に対する情報提供外国人住民の多国籍化による多言語・個別対応自治体の予算・担当人員の確保外国人住民の増加に伴う現状・実態の把握日本人住民に対する意識啓発および関連支援そう思う(課題である)ある程度そう思うまったくそう思わないわからないあまりそう思わない図表11 外国人従業員への支援状況(複数回答、n=449)住居の紹介社宅の提供マナー教育など日本社会に溶け込む支援イベントなど地域の人々との交流促進外国人雇用の活用状況、課題について特に行っていない無回答(注)日本総合研究所「人手不足と外国人採用に関するアンケート調査」(2019年1~2月実施)0605040302010(%)(出典)法務省「在留外国人統計」、「登録外国人統計」、厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況」、総務省「労働力調査」、日本国際交流センター「『多文化共生と外国人受け入れに関するアンケート調査 2017』調査報告書」(2018年2月)、日本総研「『人手不足と外国人採用に関するアンケート調査』結果」(2019年4月17日)、パーソル総合研究所「外国人雇用に関する企業の意識・実態調査」(2019年9月)、首相官邸「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議(令和元年12月20日)」、出入国在留管理庁「新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」 (注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。 ファイナンス 2020 Jul.61コラム 経済トレンド 73連載経済 トレンド

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