ファイナンス 2020年7月号 No.656
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釈できます。このことから、実務的には、投資家がどの程度スキューを想定しているかを把握する際、プットのIVがコールのIVに対して、どの程度高い水準にあるかをみることが少なくありません。例えば、Bloombergによる米国債先物オプションから算出されたスキュー指数は、「の上図のように、権利行使価格が低下していくとが上がっており、フラットなカーブでなくスマイル・カーブとなっていることが確認できます。図の下図にスマイル・カーブからインプライされる分布(インプライド分布)が示されていますが、(既出の図で確認できるとおり)まさに負のスキューを有している図表といえます。上記に鑑みると、投資家が先物価格の変化の分布に対して、プットのの方がコールのより高くなっていれば、投資家は先物価格の急騰に比べ暴落の保険を需要していると解釈できます。このことから、実務的には、投資家がどの程度スキューを想定しているかを把握する際、プットのがコールのに対して、どの程度高い水準にあるかをみることが少なくありません。例えば、による米国債先物オプションから算出されたスキュー指数は、「プットの-コールの」という形で定義されています(実際には「-」という形でデルタを使って定義していますが、デルタ()が意味することについては次節で説明します)。スキュー指数は特に株式市場で注目度が高い指数になっています。最も典型的な指標はシカゴ・オプション取引所()が構築するスキュー指数()です。同指標」という形で定義されています(実際には「暴落の保険に相当するオプションの価格()を上昇させます。図を確認すると、同図の上図のように、権利行使価格が低下していくとが上がっており、フラットなカーブでなくスマイル・カーブとなっていることが確認できます。図の下図にスマイル・カーブからインプライされる分布(インプライド分布)が示されていますが、(既出の図で確認できるとおり)まさに負のスキューを有している図表といえます。上記に鑑みると、投資家が先物価格の変化の分布に対して、プットのの方がコールのより高くなっていれば、投資家は先物価格の急騰に比べ暴落の保険を需要していると解釈できます。このことから、実務的には、投資家がどの程度スキューを想定しているかを把握する際、プットのがコールのに対して、どの程度高い水準にあるかをみることが少なくありません。例えば、による米国債先物オプションから算出されたスキュー指数は、「プットの-コールの」「-」という形でデルタを使って定義していますが、デルタ()が意味することについては次節で説明します)。スキュー指数は特に株式市場で注目度が高い指数になっています。最も典型的な指標はシカゴ・オプション取引所()が構築するスキュー指数()です。同指標スは暴落を過小評価しているため、このことが)を上昇させます。図を確認すると、同図いくとが上がっており、フラットなカーブが確認できます。図の下図にスマイル・カード分布)が示されていますが、(既出の図で有している図表といえます。化の分布に対して、プットのの方がコールの格の急騰に比べ暴落の保険を需要していると解資家がどの程度スキューを想定しているかを把して、どの程度高い水準にあるかをみることがよる米国債先物オプションから算出されたスキ-」という形で()が意味することについては次節で説明高い指数になっています。最も典型的な指標は築するスキュー指数()です。同指標」という形でデルタ(Delta)を使って定義していますが、デルタが意味することについては次節で説明します)。スキュー指数は特に株式市場で注目度が高い指数になっています。最も典型的な指標はシカゴ・オプション取引所(Chicago Board Options Exchange, CBOE)が構築するスキュー指数(Skew index)です。同指標は「は「-×スキュー(歪度)」という形で定義されていますが、(スキューが負になると分布が下落側に分布が厚くなることを思い出すと)スキュー指数が上昇すると暴落する可能性を投資家が高く見積もっていることが分かるような設計がなされています。冒頭で言及したとおり、このような正規分布から外れた現象をブラックスワンと呼ぶことがあることから、スキュー指数を「ブラックスワン指数」と呼ぶこともあります。スキュー指数の詳細は崎山・眞壁・長野()などをご参照ください。3デルタを用いたスマイル・カーブ3.1とデルタの関係市場参加者のレポートやなどの機能において、やを表現する際、デルタという概念を使うことが少なくありません。そもそも、デルタとは原資産(国債先物オプションの場合、国債先物価格)が変化した場合、オプションの価格がどれくらい動くかを示しています(すなわち、国債先物オプションの価格、国債先物の価格をとすると、デルタはδ=/と定義できます)。これはオプションのリスク量を算出するうえで、最も基本的なリスク指標になります。やを表現するうえでデルタを用いる一因は、先物価格の動きによりとなる権利行使価格が変化するためです。国債先物オプションはその時々の先物価格に近い銭刻みの価格を中心としたうえで、それを軸に上下に銭刻みで先物を上場させます。もちろん、先物価格は変化するため、その時々の先物水準で軸となるとなる先物オプションの権利行使価格は異なりますし、常に先物価格が権利行使価格と一致するとは限りません。例えば、時系列データを用いて分析を行いたい場合、権利行使価格を用いると、その時の先物の価格次第で、円のオプションはになることもあればになることもあります。一方、デルタをつかえば、後述するようにはデルタというリスク量を用いればと表現できるため、を軸におよびのがからどの程度乖離しているかを評価することが可能になります(デルタのオプションをデルタ(デルタ)と書くこともあります)。すなわち、デルタを用いることで、の水準、あるいはどれくらいからやにどの程度乖離しているかを把握することが容易になるわけです。」という形で定義されていますが、(スキューが負になると下落方向に分布が厚くなることを思い出すと)スキュー指数が上昇すると暴落する可能性を投資家が高く見積もっていることが分かるような設計がなされています。冒頭で言及したとおり、このような正規分布から外れた現象をブラックスワンと呼ぶことがあることから、スキュー指数を「ブラックスワン指数」と呼ぶこともあります。スキュー指数の詳細は崎山・眞壁・長野(2017)などをご参照ください。3デルタを用いたスマイル・カーブ3.1 OTM/ITMとデルタの関係市場参加者のレポートやBloombergの機能などにおいて、OTMやITMを表現する際、デルタという概念を使うことが少なくありません。そもそも、デルタとは原資産の価格(国債先物オプションの場合、国債先物価格)が変化した場合、オプションの価格がどれくらい動くかを示しています(すなわち、国債先物オプションの価格)」という形で定義されていますが、(スキューが負になるとことを思い出すと)スキュー指数が上昇すると暴落する可いることが分かるような設計がなされています。冒頭で言分布から外れた現象をブラックスワンと呼ぶことがあるこックスワン指数」と呼ぶこともあります。スキュー指数の詳などをご参照ください。カーブ関係などの機能において、やを表現する際、少なくありません。そもそも、デルタとは原資産(国債先物格)が変化した場合、オプションの価格がどれくらい動くか債先物オプションの価格、国債先物の価格をとすると、ます)。これはオプションのリスク量を算出するうえで、最す。でデルタを用いる一因は、先物価格の動きによりとめです。国債先物オプションはその時々の先物価格に近いえで、それを軸に上下に銭刻みで先物を上場させます。ため、その時々の先物水準で軸となるとなる先物オプますし、常に先物価格が権利行使価格と一致するとは限りを用いて分析を行いたい場合、権利行使価格を用いると、そ円のオプションはになることもあればになるこ、国債先物の価格を」という形で定義されていますが、(スキューが負になるとことを思い出すと)スキュー指数が上昇すると暴落する可いることが分かるような設計がなされています。冒頭で言分布から外れた現象をブラックスワンと呼ぶことがあるこクスワン指数」と呼ぶこともあります。スキュー指数の詳などをご参照ください。カーブ係などの機能において、やを表現する際、少なくありません。そもそも、デルタとは原資産(国債先物格)が変化した場合、オプションの価格がどれくらい動くか債先物オプションの価格、国債先物の価格をとすると、す)。これはオプションのリスク量を算出するうえで、最す。でデルタを用いる一因は、先物価格の動きによりとめです。国債先物オプションはその時々の先物価格に近いえで、それを軸に上下に銭刻みで先物を上場させます。め、その時々の先物水準で軸となるとなる先物オプますし、常に先物価格が権利行使価格と一致するとは限り用いて分析を行いたい場合、権利行使価格を用いると、そ円のオプションはになることもあればになることすると、デルタはは「-×スキュー(歪度)」という形で定義されていますが、(スキューが負になると分布が下落側に分布が厚くなることを思い出すと)スキュー指数が上昇すると暴落する可能性を投資家が高く見積もっていることが分かるような設計がなされています。冒頭で言及したとおり、このような正規分布から外れた現象をブラックスワンと呼ぶことがあることから、スキュー指数を「ブラックスワン指数」と呼ぶこともあります。スキュー指数の詳細は崎山・眞壁・長野()などをご参照ください。3デルタを用いたスマイル・カーブ3.1とデルタの関係市場参加者のレポートやなどの機能において、やを表現する際、デルタという概念を使うことが少なくありません。そもそも、デルタとは原資産(国債先物オプションの場合、国債先物価格)が変化した場合、オプションの価格がどれくらい動くかを示しています(すなわち、国債先物オプションの価格、国債先物の価格をとすると、デルタはδ=/と定義できます)。これはオプションのリスク量を算出するうえで、最も基本的なリスク指標になります。やを表現するうえでデルタを用いる一因は、先物価格の動きによりとなる権利行使価格が変化するためです。国債先物オプションはその時々の先物価格に近い銭刻みの価格を中心としたうえで、それを軸に上下に銭刻みで先物を上場させます。もちろん、先物価格は変化するため、その時々の先物水準で軸となるとなる先物オプションの権利行使価格は異なりますし、常に先物価格が権利行使価格と一致するとは限りません。例えば、時系列データを用いて分析を行いたい場合、権利行使価格を用いると、その時の先物の価格次第で、円のオプションはになることもあればになること定義できます)。これはオプションのリスク量を算出するうえで、最も基本的なリスク指標になります。*11) ここで「おおよそ」という表現を使っている理由は、例えばATMコールのデルタは0.5より少し大きくなるからです。*12) コールをロングした場合、デルタの領域が0から1になりますが、逆にコールをショートした場合、デルタの領域が-1から0になります(逆に、プットのロングの場合、デルタの領域は-1から0になる一方、プットのショートの場合、0から1になります)。ここでの目的はATMからどの程度乖離しているかをみることであるため、デルタの大きさ(水準)に焦点をあてています。なお、プットとコールのデルタの詳細はハル(2016)の第19章などをご参照ください。OTMやITMを表現するうえでデルタを用いる一因は、先物価格の動きによりATMとなる権利行使価格が変化するためです。国債先物オプションでは、権利行使価格が50銭刻みでオプションが設定され、それぞれが上場します。もちろん、先物価格は変化するため、ATMとなる先物オプションの権利行使価格は変化しますし、先物価格と一致した行使価格のオプションが上場しているとは限りません。例えば、時系列データを用いて分析を行いたい場合、特定の権利行使価格(例えば152円)を用いると、その時の先物の価格次第で、152円のオプションはOTMになることもあればITMになることもあります。一方、後述するようにATMはデルタというリスク量を用いればおおよそ0.5*11と表現できるため、0.5を軸にOTMおよびITMのIVがATMからどの程度乖離しているかを評価することが可能になります(デルタ0.5のオプションを50%デルタ(50デルタ)と書くこともあります)。すなわち、デルタを用いることで、ATMの水準、あるいはATMからOTMやITMにどの程度乖離しているかを把握することが容易になるわけです。図4は縦軸がデルタ(の水準)で横軸がATMからの乖離を示していますが、デルタがおおよそ0.5の水準にATMが位置します*12。ここでできる限り直感的に、ATMの際、デルタがおおよそ0.5になる理由を考えてみます。例えば、仮に現在の先物価格が152円であるとしましょう。この場合、権利行使価格が147円のコール・オプションは、現在権利行使した場合、(先物を147円で購入して、152円で売ればいいので)5円の利益が出ます。すなわち、このコール・オプションはITMのオプションになり、図4であれば右側に位置します。先物オプションの満期は長くてもせいぜい1か月程度ですから、満期まで価格が暴落して147円以下になる確率は相当低いことを考えると、このオプションはほぼ権利行使されるオプションと考えられます。ほぼ権利行使されるオプションについては、先物価格の変 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