ファイナンス 2020年7月号 No.656
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くしようとしないインセンティブをなくす政策や、規模の経済を追求する企業への支援策(合併優遇策等)、研究開発や設備投資、最先端技術の活用、輸出促進等の行為そのものを優遇する政策を進め、企業規模の観点だけで優遇するのではなく、国益に大きく貢献する企業を支えていく政策へと変えていくべきと主張している。さらに、経営者に何らかの対応を取ることを促す手段が、最低賃金の引上げであると論じている(図表5)。■第5章「企業規模と賃金、労働生産性について」(奥愛 財務総研総括主任研究官、井上俊 同研究員、升井翼 同財政経済計量分析室員)奥・井上・升井論文は、従業員数でみた企業規模と賃金、労働生産性の関係について、法人企業統計の個票データを用いて分析を行い、労働生産性を高めるための政策を考察している。その結果、企業規模が大きくなればなるほど、賃金及び労働生産性が高く(図表6)、資本収益率も高いという結果を得ている。また、賃金に対しては労働生産性が関係しており、労働生産性に対しては一人当たり売上高が関係しており、更に一人当たり売上高は、製造業の場合は、労働装備率が関係していることを明らかにしている。これらの結果を踏まえ、人口が減少していく日本において、賃金及び労働生産性を高めていくためには、企業が雇用形態に留意しながら、現状よりも企業規模を大きくしていく政策が有効であることを指摘している。図表5 最低賃金および生産性 各国比較(出所)第4章(講演録)「国運の分岐点」図表16より引用。0.002.004.006.008.0010.0012.0014.0016.00010,00020,00030,00040,00050,00060,00070,000サンマリーナオーストラリアフランスドイツベルギーオランダ英国台湾オマーンカナダ韓国スロバニアマルタ島日本スペインイスラエルポーランドギリシャ(米ドル)(米ドル)最低賃金と生産性には強い相関がある生産性(左軸)最低賃金図表6 企業規模別の労働生産性の変化(注) 図表の凡例中のLは従業者数を示している。(出所)第5章「企業規模と賃金、労働生産性について」図表8より引用。0%5%10%15%20%25%~-2-2~-1-1~00~11~22~33~44~55~66~77~88~99~1010~1111~1212~1313~1414~1515~1616~1717~1818~1919~2020~2121~2222~2323~2424~2525~2626~2727~2828~2929~3030~3131~3232~3333~3434~3535~3636~3737~3838~3939~4040~労働生産性(百万円)企業の密度L1‒4L5‒9L10‒19L20‒49L50‒99L100‒249L250‒499L500+42 ファイナンス 2020 Jul.SPOT

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