ファイナンス 2020年7月号 No.656
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財務総合政策研究所(財務総研)は、2019年11月から2020年3月にかけて「人口減少と経済成長に関する研究会」を開催した。日本の総人口は、2008年の1億2,808万人をピークにその後減少に転じており(図表1)、本年4月1日時点では1億2,596万人と推計されている。日本は本格的な人口減少社会に突入している。本研究会では、人口減少が続くことが見込まれる中、経済の生産性を高めつつ豊かな社会を維持していくために、企業・産業、労働市場、グローバル化などの分野で、どのような対応が考えられるかについて研究を行った。*1 *2本研究会の座長は、土居丈朗教授(慶應義塾大学、財務総研特別研究官)であり、委員として伊藤恵子教授(中央大学)、滝澤美帆教授(学習院大学)、山本勲教授(慶應義塾大学)を迎え、デービッド・アトキンソン氏(株式会社小西美術工藝社 代表取締役社長)及び吉川洋氏(立正大学学長、財務総研名誉所長)にご講演いただいた。また、財務総研からも関連するテーマについて調査・分析を行うとともに、諸外国の*1) 本報告書に示された意見はすべて執筆者個人に属し、財務省あるいは財務総合政策研究所の公式見解を示すものではありません。*2) 本原稿及び報告書の各章の執筆者の肩書は、2020年6月末現在。取組から知見を得るべくスウェーデンとスイスについて調査を行い、報告を行った。本稿では、「人口減少と経済成長に関する研究会」で得た知見について、報告書の各章の内容に沿って紹介する。■序章「人口減少に直面したわが国が克服すべき課題」(土居丈朗 慶應義塾大学経済学部教授)今般の新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大により、需要側に加え供給側のショックも生じている。感染症の拡大に伴う経済へのショックを克服することは大きな政策課題だが、コロナショックが去った後でも、人口減少に伴う政策課題が一挙に解決される訳ではない。コロナショック以前から克服すべき問題が、コロナショックにより顕在化し、喫緊の課題となった。これらの課題の克服に取り組むことで、パンデミックリスクの低減などコロナショック後の社会経済に適合するとともに、人口減少による弊害をも除去することができると論じている。「人口減少と経済成長に関する研究会」の概要報告*1財務総合政策研究所*2 総括主任研究官 奥 愛/研究企画係長 青山 愛/研究企画係 戸出 紗也香図表1 日本の人口の推移(参考)0.20.40.60.811.2(年)2020年現在1億28百万人2008年87.1百万人1995年39.3百万人2042年27.7百万人1978年総人口生産年齢人口(15~64歳)老年人口(65歳以上)年少人口(0~14歳)01.419701980199020002010202020302040205020602070(億人)(出所)第2章「平成年代における構造変化」(小野稔 財務総研副所長)図表1より引用。年平均増減率(%)年代総 数0~14歳15~64歳65歳以上2015~2020-0.28-1.12-0.851.342020~2025-0.45-1.37-0.640.322025~2030-0.56-1.25-0.840.212030~2035-0.67-1.17-1.130.352035~2040-0.76-0.85-1.640.722040~2045-0.82-0.94-1.35-0.012045~2050-0.86-1.11-1.13-0.402050~2055-0.90-1.23-0.96-0.722055~2060-0.96-1.25-0.95-0.902060~2065-1.05-1.15-1.13-0.92 ファイナンス 2020 Jul.39SPOT

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