ファイナンス 2020年7月号 No.656
41/86

visualで劇的なナマハゲは、devilではないそうだ。「良い子になることを願うdevilはいないだろ」と。仰せの通り。最後に1つ、善悪を劇的にビジュアライズさせると言えば、これ。3年ほど前、ジョージア(旧国名グルジア)に出張に行った時に、丘の上に立つ「ジョージアの母の像」を見て驚いた。右手に剣、左手にワインの盃を持っている。敵には剣で戦い、友はワインで迎える、ということだそうで、メッセージは極めて明快である。ジョージアはワイン発祥の地と言われ、その歴史は8000年前に遡れると言う。確かに中央アジアからトルコに至る地域では美味しいジョージアワインが飲める。いずれにしても、この凛とした母の像には、微塵の曖昧さも無い。出来れば左手のほうで遇してもらいたいものだ。ジョージアの母の像もう1つだけ蛇足である。ジョージアの文字は極めて特殊である。これを見て欲しい。これは、在京ジョージア大使館のHPから取ったもので、「GEORGIAN AS A FOREIGN LANGUAGE」の翻訳である。決して絵文字ではない。現地で確認したが、ロシアやトルコを含め近隣のいかなる言語の文字とも根本的に異なるらしい。不思議である。申し訳ないが、これには何のオチも無い。ところがジョージアの話はこれでは終わらなかった。ここまで書いたところで日曜日の気晴らしに恵比寿のワインショップに行ったら、かなり本国でも有名な質高ジョージアワインを1本2300円で販売開始していた。こういう偶然は大事にしないといけないので、3本も買ってしまった。今月は良いことがあるかもしれない。5Visualな世界と対極にあるもの‒‒‒3000人の組織の人事最後にまた人事系の話をさせて頂きたい。2年前まで、マニラに本部を置く国際機関のADBで人事担当局長の仕事をしていた。職員の採用、異動、退職、どれも一生を左右する仕事である。Visualに劇的に仕事を出来る筈は無い。和を尊びチームの総合力を使って配慮を欠かさないように仕事をする、日本人的なものが適合する仕事かもしれない。しかし、今、思いは複雑である。それは本当に孤独な仕事であり、むしろ割り切りが出来る人の方が向いているかもしれない、と思うことがある。(1)離職を推進する仕事全く巡りあわせとして、ADBの様々な人事制度改革の時期にこの職に就いた。改革の1つとして、個々の職員の専門技能の必要性が減じたこと等を理由として離職を通告する「早期離職プログラム」の企画と実施を行うことになった。例えば、ダムの専門家が多すぎる場合、数を減らして太陽光や風力発電の専門家を採用するといったものである。この対象者人選の基準は職務能力では無い。その人の技能分野が組織にとって引き続き有用かどうかである。そうした事情のため、人選はADBが行い通告する(通告された場合は離職を拒否できない)が、離職の際の手当等で適切に遇する必要がある。こうした措置はADB創設後初めてのものであった。もちろん対象者の選定は直接の上司も含め慎重に合議で行う。しかし人事担当として私は決裁者の1人である。このプログラム以外の懲戒処分等による解雇も含め、私が人事担当局長として在職3年の間に承認した(非自発的な)離職の決定は、ちょうど100人になった。諸事情により、そのうちの何人かには、私が直接対 ファイナンス 2020 Jul.37新・エイゴは、辛いよ。SPOT

元のページ  ../index.html#41

このブックを見る