ファイナンス 2020年7月号 No.656
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20本揃えて持って行き、電卓の替え電池まで携行したところ、見つけた同僚インド人が驚嘆し大学中に触れ回った。そのインド人に「試験中に電卓の電池が切れたらどうするのだ」と聞いたところ、「そんなことが起こりませんようにと試験日の朝に神に祈る。そのお蔭で俺の電卓の電池は切れたことが無いよ」と軽く微笑みながら言われたらしい。実のところ、なかなか相互理解への道のりは遠い。2日本人が価値を見出すもの(米国人との対比)ここでは対比が比較的容易な米国人と日本人の違いについて取り上げてみたい。見解には大きな個人差はあるが、私は以下のように思っている。日本人は、多くの様々な力を作用させ、時間をかけて大きな成果を出すことを好む。1+1+1が10になるような仕事を好む。そこには目に見えない、有機的な力が作用すると信じる。これに対し、米国人は、世の中の動きの1つ1つをvisualに単純化し、劇的に仕立てた上で瞬時に評価を下すことを好む。スポーツを見てもその差は歴然としている。例えば、米国人が好きなアメリカンフットボールと、日本人が好きなラグビー。アメリカンフットボールでは、攻守が明確に分かれ、4回の攻撃で10ヤード進めないと攻守が変わる。1回の攻撃の殆どは数秒で終わり、その時々の成功者失敗者が瞬時に明確になる。10ヤード進んだか微妙な場合は、10ヤードのチェーンで計測する。このアナログでビジュアルな世界が重要なのだ。ラグビーは、全員が攻撃も守備もやる。スクラムやモールになると、ボールは何人もの身体と足の下になり、見えない。見えない所で尋常でない力が作用し合い、力と技術の総和が勝った方がボールを支配する。トライに至っても、ヒーローは定かではない。次に、米国人、そして多くの外国人にとって恐らく理解できないであろう、駅伝について見てみよう。私は、箱根駅伝の往路、品川界隈の国道1号線脇に応援に行ったことがあるが、何しろスタート直後であり集団で風のように去って行き、それで終わった。リベンジで、昨年1月2日ついに意を決して往路のゴールを見に箱根に行った。やはり箱根駅伝の醍醐味は湖畔にあると確信した。「ゴールの3時間前に着けば大丈夫だよ」という誰かの言葉を信じて午前10時半に着いたら、ゴール前の500mは既に人で一杯。熱心なファンが大型バスで既に到着している。ゴール3時間前にこの人出ゴールから500m離れた道端で場所を確保した後でぶらぶら歩いていたら、あちこちで各大学が発行する駅伝新聞を渡される。「スポダイ」「早スポ」など。参加選手のプロフィールや記録などが詳細に書かれ、結構面白い。こういうのを作って観客に応援してもらってみんなで盛り上げようというのは、とても良い。ただ、まだ既製のスポーツ新聞の発想と構成から抜け切れていない気もするが。。。しかし、この世界的に有名な観光地箱根にして、外国人は皆無である。「スポダイ」の英語版に期待したい。午後1時を回ると、トップの大学の走者がやってく ファイナンス 2020 Jul.35新・エイゴは、辛いよ。SPOT

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