ファイナンス 2020年7月号 No.656
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支持を失ってしまうこともあり得る*40。セルジオ・ファブリーニ教授(「政治制度論」芦書房、白鳥令編、1999)によれば、アメリカの大統領は、議院内閣制の英国の首相と比べて危機状況への対処に明らかな利点をもっている。しかしながら、それは、危機が短く爆発的である場合であって、危機が長引くと、権力分立のシステムは、完全な麻痺状態を作り出し得る。それに対して、議院内閣制の英国においては、首相は先ず内閣を納得させなければならず、また自分の政党も納得させなければならない。しかし、その二重の説得に成功すれば、首相は執行機関および立法機関からの制度的な支持を受けて、自らの政策を断固として執行することができるのだという。ファブリーニ教授の説によるならば、コロナウィルスへの対応が長期戦になっていけば、トランプ大統領よりもジョンソン首相の方が優位な立場になっていくということになる。コロナウィルス後の世界のリーダーシップを考えていくにあたって留意しておくべきポイントであろう。*40) 世界大恐慌の際、第一次大戦の元将兵や家族が退役軍人ボーナスを求めて全米からワシントンに詰めかけたのを軍隊を出動して解散させたフーバー大統領は、翌年の大統領選挙でルーズベルト候補に大敗した(毎日新聞「余禄」2020.6.6)。 ファイナンス 2020 Jul.33危機対応と財政(2)SPOT

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