ファイナンス 2020年7月号 No.656
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金や人的リソースを提供する役割を担うことが多いため、部局を越えた支援に適します。他方、都市・防災・強靭性・土地局は関連テーマの途上国支援事業を直接担うため、横串的な支援に適さない一方、日本の重点事項を現場の支援に結びつけることが容易です。上図は、それぞれのプログラムの関係部局や日本・途上国との関係を示したものです。5日本人スタッフの活躍質高や防災での連携は日本人スタッフの活躍にも貢献しています。東京ベースのポジションは、「日本に関する知見」や「日本語」が要件になることが多く、日本人にとって有利です。当初の契約期間は、他の多くのポジションと同様に2―3年が基本ですが、この間に世界中の人々に向け、日本の施策と途上国での応用可能性を伝えるレポートを書き、そして、実際に世銀のプロジェクトに生かすオペレーションに携わることで、ワシントンDCの本部や途上国事務所などに移って活躍の場を広げるチャンスが生まれます。今回紹介した東京オフィスの3機関では、2020年5月現在5名の日本人が専門職員(Specialist, Program Officerなど)として働いています。また、この3機関で世銀スタッフとしてのキャリアをスタートした方のうち、3名(上記5 名に含まない)が世銀本部や途上国事務所に移って活躍しています。6日本にとっての世銀の付加価値日本の知見を途上国支援に活用するという点では、JICAのような日本の開発機関も取り組んでいます。途上国から見れば、世銀もJICAも融資や技術支援を提供する機関としては変わりありません。また、開発機関は、時に同業者としてライバル関係にもなり得ます。さらに、世銀はあくまで国際機関として、日本の信託基金であっても自らのルールと戦略に則って業務を企画・実施するので、日本の「顔の見える外交」という観点からは限界があります。それにもかかわらず、なぜ敢えて世銀を使って日本の知見を発信する必要があるのか。その答えとして3点挙げられます。第一に、日本が重視する開発テーマの主流化。世銀での議論やオペレーションはそれ自体が国際政治の縮図と言えます。世銀IMF合同開発委員会、増資会合では当然に各国間で議論が交わされます。そして、世銀の施策やプロジェクトも多国籍のスタッフによって議論された上で、各国政府代表による理事会を経て意思決定されます。そのような多様な組織、そして必ずしも日本の意見が通らない環境の中、日本が重視する図:世銀東京オフィスを通じた途上国支援日本財務省防災グローバルファシリティ東京防災ハブTDLC質高パートナーシップ基金都市・防災・強靭性・土地局インフラ・PPP・保証グループ日本の省庁、自治体、大学、民間企業等共同研究、研修、国際会議等•都市間パートナーシップ•公共交通志向型開発、都市再生等世銀内の各インフラ担当局等(交通、エネルギー、水、都市など)資金配分、業務支援戦略、管理資金拠出融資・グラント、技術支援•災害に強いインフラ•リスクの認識、削減と備え•災害リスクファイナンス・保険•質高原則に沿ったインフラ支援日本人専門家派遣途上国政府の各省庁世銀東京オフィス世銀本部26 ファイナンス 2020 Jul.SPOT

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