ファイナンス 2020年7月号 No.656
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ランを定めます。直近の例では、2019年11月に廃棄物管理をテーマに13か国の実務担当者が参加し、北九州市の廃棄物管理の現場を視察しました。2016年からの5年間に28回の集中研修に82か国からなる308名の中央政府職員、319名の地方政府職員が来日しています。各研修後は、専門家派遣を含む様々な技術協力を行っており、35か国において106件の事業を支援しています(2020年5月時点)。(写真3)北九州市での実務者研修会合の様子(2019年11月)。(写真提供:世銀)4.3  質の高いインフラ投資パートナーシップ信託基金世銀と日本は、2016年のG7 サミットで採択された伊勢志摩原則を世銀事業に反映させていくことを目的に、質の高いインフラ投資パートナーシップ信託基金(質高基金)を設立しました。質高基金は、世銀が支援するインフラ投資に質高の要素を盛り込むため、事業の準備や実施段階における調査や仕様の向上などを支援しています*2。また、防災ハブやTDLCが防災や都市開発といったテーマに特化して支援しているのに対し、質高基金では交通、水、エネルギーなどの様々なセクターにおいて質高を広く促進することを目指しています。2016年以降、36か国の交通、上水道などのプロジェクトに対して1,850万ドルを拠出することで、世銀の134億ドルに上る融資・グラント案件に質高の要素を確保しています(2020年6月時点)。引き続き、「質の高いインフラ投資に関する G20 原則」の実行に向け、特に、実際の事業における*2) 質高基金は、世銀が支援する公共事業を主な支援対象としている一方で、日本として、途上国における民間のインフラプロジェクトやPPPプロジェクトにおける質の高いインフラ投資を促進するため、世銀グループの国際金融公社(IFC)に設立している包括的日本信託基金(CJTF)の質の高いインフラ支援枠(2016年に設置)や、他国と共同で2015年に設立したGlobal Infrastructure Facilityを通じた支援も実施しています。Value for Moneyやライフサイクルコストの反映、ガバナンスの強化といった観点から支援を進めていきます。4.4  世銀本部(ワシントンDC)との関係読者の方の中には、東京で質高や防災を担う組織をなぜ3つに分けるのか疑問に思う方がいるかもしれません。これは世銀の機構に由来します。世銀の組織構造は、日本に例えれば霞が関にある省庁と各国に散らばる大使館を束ねたものと言えます。融資・グラント・技術支援などのオペレーションについては、国土交通省、厚生労働省、農林水産省といった各省庁の政策テーマに沿って編成された政策部局と、国別の施策を決定する途上国事務所(Country Oce)が主に担います。日本でもインフラ、防災という政策テーマには、様々な省庁が各施策に取り組んでいます。それは途上国政府も同様であり、各途上国政府に合わせて組織を形成している世銀でも複数部局が関与しています。防災ハブ、TDLC、質高インフラパートナーシップについては、それぞれ、世銀本部の以下の部局が所管しています。(1)防災グローバルファシリティ(Global Facility for Disaster Reduction and Recovery):防災をテーマに各国から資金を募り、世銀内各組織を横断的に技術・資金支援。(2)都市・防災・強靭性・土地局(Urban, Disaster Risk Management, Resilience and Land Global Practice):都市政策、防災等について途上国に融資・技術支援等を実施。(3)インフラPPP保証グループ(Infrastructure, PPP & Guarantees (IPG) Group):インフラファイナンスの分析、官民パートナーシップ (PPP)、債務保証など、公共インフラへの民間資金動員を中心に途上国を支援。日本は世銀の各部局の特性を踏まえて連携を進めています。防災グローバルファシリティやインフラPPP保証グループは、世銀内の各部局のプロジェクトに資 ファイナンス 2020 Jul.25世界銀行と日本の連携 質の高いインフラ投資と防災 SPOT

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