ファイナンス 2020年7月号 No.656
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4.1  東京防災ハブ(Tokyo Disaster Risk Management Hub)世銀は、日本政府と連携して東日本大震災対応についての教訓をまとめ、途上国開発に生かすために「大規模災害から学ぶ:東日本大震災からの教訓」というレポートをまとめました。このレポートは2014年に英語と日本語で出版され、高い評価を得ました。今でも、世銀の業務やレポートの中で度々参照されています。このような世銀と日本の連携をさらに強化し、日本の知見を活かしつつ、途上国開発の中で防災を主流化するため、日本-世銀防災共同プログラムが立ち上がり、当プログラムの核として、2014年に世銀東京防災ハブが設立されました。(写真1)世銀東京防災ハブ設立時の記念写真(2014年)。左から、鈴木英明世銀日本理事、塚越保祐世銀駐日特別代表、ジム・ヨン・キム世銀総裁、シリル・ミュラー世銀副総裁(肩書は当時)。(写真提供:世銀)プログラムは5年で区切っており、最初の5年間は世銀の防災プログラムを資金支援するとともに、日本の知見と専門家を発掘し、それを世銀の文書としてまとめ、世銀スタッフや途上国政府に発信することを中心に活動しました。また、途上国政府職員を日本に招いた専門家研修も実施しました。2019年からフェーズ2に移行し、フェーズ1で発掘した知見を基に、技術支援案件の組成や実施、さらには、支援先への防災ハブスタッフや日本人専門家派遣につなげています。2014年の設立以来、これまでに68か国130件のプロジェクトを支援しており、公共・民間セクターから1000人以上の専門家が日本での研修や途上国支援などに参加しています(2020年3月時点)。(写真2)東京防災ハブ第2フェーズの記念イベントでの宮崎成人世銀駐日特別代表による基調講演(2019年3月)。(写真提供:世銀)4.2  東京開発ラーニングセンター(Tokyo Development Learning Center:TDLC)東京開発ラーニングセンター(TDLC)は、日本と世銀の連携により、遠隔研修素材などを提供し、途上国への技術支援に生かすことを目的に2004年に設立されました。2016年に抜本的に改組し、現在は都市開発をテーマに、日本の知見を世銀都市関連のプロジェクトファイナンスや技術支援に役立てるハブとして機能しています。TDLCの重点プログラムとして、都市間パートナーシッププログラム(City Partnership Program:CPP)があります。このプログラムでは、公共交通志向型開発、都市再生、廃棄物管理、住宅政策、地域経済開発、高齢化対策などの都市開発課題に取り組んできた日本の自治体の事例を紹介し、世銀スタッフや途上国関係者と直接知見を共有する機会を提供しています。TDLCは、これまでに北九州市、京都市、神戸市、富山市、福岡市、横浜市とCPPに関する覚書を締結し、各都市に関するケーススタディの作成、途上国政府職員等の研修受入れ、自治体職員を含めた官民学の専門家の途上国派遣などを実施しています。また、TDLCは、世銀融資の都市関連事業に貢献するため、テーマ特化型の実務者研修会合(Technical Deep Dive:TDD)も実施しています。この研修では、世銀融資の都市関連事業を計画・実施する途上国政府・自治体職員、世銀の事業担当者、日本人専門家が一堂に会し、1週間にわたって講義、議論、視察をした上で、途上国政府や世銀スタッフがアクションプ24 ファイナンス 2020 Jul.SPOT

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