ファイナンス 2020年7月号 No.656
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新型コロナウイルス感染症緊急経済対策(以下、「緊急経済対策」)における税制上の措置については、本年4月6日の与党におけるとりまとめ、翌7日の「緊急経済対策」の閣議決定、及び4月20日の「緊急経済対策」の変更の閣議決定を経て、4月30日に「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律」が成立・施行されたところである。本稿においては、「緊急経済対策」における税制上の措置の概要について説明したい。1基本的考え方新型コロナウイルス感染症の我が国経済に与える影響が甚大なものであることに鑑み、感染症およびその蔓延防止のための措置の影響により厳しい状況に置かれている納税者に対し、緊急に必要な税制上の措置を講ずるものである。具体的な改正内容は以下のとおりである。2主な措置(1)納税の猶予制度の特例イベントの自粛要請や入国制限措置など、新型コロナウイルスの感染拡大防止のための措置に起因して多くの事業者の収入が急減しているという現下の状況を踏まえ、収入に相当の減少があった方の国税について、無担保かつ延滞税なしで1年間、納税を猶予する特例を設ける(資料1)。具体的には、令和2年2月から納期限までの一定の期間(1ヵ月以上)において収入に相当の減少(前年同期比概ね20%以上の減少)があった場合について、一時に納税をすることが困難と認められるときには、税務署長は、納税者から納期限までにされた申請に基づき、1年以内の期限を限り、納税を猶予することができる特例措置を講ずることとする。本特例は、印紙で納付する印紙税等を除き、基本的に全ての税目が対象となる。令和2年2月1日から令和3年2月1日までに納期限が到来する国税について適用することとする。その際、施行日前に納期限が到来している国税についても遡及して適用することができることとする。一時に納税をすることが困難と認められるか否かの審査に当たっては、少なくとも向こう半年間の事業資金を考慮に入れるなど納税者の置かれた状況に配慮し適切な対応を行うほか、収支状況等を示す書類の提出が難しい場合には口頭による説明を認めるなど柔軟な運用を行うこととする。(2)欠損金の繰戻しによる還付の特例中小企業(資本金1億円以下の法人)等に認められている青色欠損金の繰戻しによる還付制度について、いわゆる中堅企業(資本金1億円超10億円以下の法人)についても適用できることとする(令和2年2月1日から令和4年1月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金額に適用)。(3) テレワーク等のための中小企業の設備投資税制中小企業がテレワーク等のために行う設備投資について、中小企業経営強化税制を拡充し、その対象に加える。(4) 文化芸術・スポーツイベントを中止等した主催者に対する払戻請求権を放棄した観客等への寄付金控除の適用政府の自粛要請を踏まえて文化芸術・スポーツイベントを中止等した結果、主催者に大きな損失が生じている状況を踏まえ、文化芸術・スポーツに係る一定の緊急経済対策における 税制上の措置(国税)について主税局総務課 税制企画室長 内藤 景一朗 ファイナンス 2020 Jul.19SPOT

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