ファイナンス 2020年7月号 No.656
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1令和2年度補正予算(第2号)成立までの経緯(1)背景新型コロナウイルス感染症は、昨年末に中国湖北省武漢において確認されて以来、中国を中心に感染が国際的に広がりを見せ、本年1月30日には世界保健機関により、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」が宣言されるに至った。このような状況下、日本政府は、政府としての対策を総合的かつ強力に推進するため、1月30日に「新型コロナウイルス感染症対策本部」を設置することとし、新型コロナウイルス感染症の「指定感染症」への指定、滞在歴による外国人等の上陸拒否などの措置を講じた。(2)緊急対応策第1弾、第2弾による対応当初、財政措置を伴うものとして、政府は予備費及び令和元年度予算の未執行分を活用し、新型コロナウイルス感染症に関して2回の緊急対応策を実行してきた。具体的には、・第1弾として、政府チャーター機による帰国者の生活支援やワクチン等の研究開発の加速などを盛り込んだ、予備費103億円を含む総額153億円の対応策を2月13日にとりまとめ、・第2弾として、新たな助成金など学校の臨時休業に伴って生じる課題への対応や、雇用調整助成金の特例措置の拡大などを盛り込んだ、予備費2,715億円を含む総額4,308億円の対応策を3月10日に取りまとめた。・さらに、上記の財政措置に加えて、資金繰り支援として、第1弾では日本政策金融公庫等での緊急貸付・保証枠の確保に5,000億円、第2弾では特別貸付制度創設など1.6兆円の金融措置を講じることとした。このように、政府としては、新型コロナウイルス感染症に関して、国内感染拡大防止対策、雇用の維持と事業の継続の対応を中心に、財政・金融措置をもって速やかに対応してきた。(3) 総理による経済対策の策定指示及び令和2年度補正予算(第1号)の編成指示こうした対応を進めてきたが、新型コロナウイルス感染症は国内においても感染拡大し、また、感染拡大による世界全体での経済活動縮小の影響も受け、日本経済は甚大な影響を被ることとなった。この国難とも言える状況を乗り越えるため、3月28日に安倍総理より、緊急経済対策を速やかに策定するよう指示がなされた。そこでは、26兆円の「総合経済対策」等に加え、新たに補正予算を編成し、財政・金融・税制を総動員した前例にとらわれない経済対策を講じることとされ、以下の方針が示された。(1)感染拡大防止策と医療提供体制の整備及び治療薬の開発(2)雇用の維持と事業の継続(3)次の段階としての官民を挙げた経済活動の回復(4)強靱な経済構造の構築(5)今後の備えこうした方針の下策定された「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」は、令和2年度補正予算(第1号)(以下、「第1次補正予算」)と昨年の「総合経済対策」の今後効果が発現することが見込まれるもの等を併せて総額117.1兆円、財政支出48.4兆円の規模となった。緊急経済対策の実行のために編成された第1次補正予算は、4月7日の概算閣議決定、4月20日の概算決定の変更閣議決定を経て、4月27日に国会へ提出さ令和2年度補正予算(第1号及び第2号)の概要について主計局総務課主計官 寺岡 光博10 ファイナンス 2020 Jul.SPOT

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