ファイナンス 2020年7月号 No.656
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だったが、今般は当初3年間が0.5%、4年目以降は赤字時0.5%、黒字時2.6%~2.95%となっている。また、貸付期間は10年のみだったが、5年1カ月、10年、20年から選択が可能。さらに、想定よりも早く事業が回復した場合には、5年超経過すれば期限前弁済も可能になった。企業からの融資期待に応え 政投銀が資本性劣後ローンを提供一方、中堅・大企業向け危機対応業務では、政投銀・商工中金が、日本公庫によるツーステップローン等を通じて危機対応融資を行い、中堅・大企業の資金繰りを支援する(図表8)。2次補正予算では、今後のさらなる状況の悪化に備えるため、一定の資本性が認められる資本性劣後ローンを危機対応業務のメニューに追加した。条件面では従来の資本性劣後ローンよりも緩和されている。たとえば、東日本大震災時の制度では、貸付限度額が20億円だったが、今般の制度では上限はない。利率に関しても今般の制度では中堅企業向けに当初3年間▲0.5%の利下げが行われる。信用力の高い大企業と比較して中堅企業は利率が高めになることに配慮したものだ。また、貸付期間も事業者のニーズに応じて柔軟に設定される。5月末時点の分析によると政投銀に対する融資期待額は3兆円超に達している。これを産業別に見ると、新型コロナウイルスの影響を直接的に受けている航空産業や大手民間鉄道会社等を含む運輸・交通が件数・金額面で多くを占めており、件数面では、地方企業からの支援要請も多い。また、地域別では、件数・金額ともに資金ニーズは首都圏・関西圏に集中している。融資期間別にみると、各社とも足元の資金繰り対策として、短期(期間5年未満)の資金ニーズが一定割合を占めている一方で、今般の危機は長期化する恐れもあることから、十分な備えを確保するべく、期間10年超の長期の資金ニーズも多く寄せられている。図表8●政投銀・商工中金による中堅・大企業向け危機対応業務のスキーム日本政策金融公庫政投銀商工中金(指定金融機関)政府出資金損害担保利子補給出資金資本性劣後ローン貸付け等貸付け(ツーステップ・ローン)貸付(シニアローン)民間金融機関協調融資中堅・大企業(注1)ツーステップ・ローンの利率は、政府から日本政策金融公庫への貸付利率等と同じ。(注2)政投銀・商工中金から事業者(中堅・大企業)への貸付利率については、指定金融機関が個別に決定し、中堅企業向け(劣後ローン含む)については、当初3年間、▲0.5%利下げを実施。(注3)中堅企業:資本金10億円未満で、中小企業ではない法人図表9●中堅・大企業向け資本性劣後ローン(危機対応業務)の貸付け条件今般の制度(参考)東日本大震災時の制度貸付限度額上限なし20億円利率指定金融機関が個別に決定中堅企業向け:▲0.5%利下げ(当初3年間)中堅企業向け:黒字時 4.05% 赤字時 0.4%大企業向け:黒字時 3.8% 赤字時 0.4%貸付期間長期一括償還(事業者のニーズに応じて個別に決定)10年一括償還民間の協調融資等原則同額以上原則1.5倍以上資本性の有無○○ ファイナンス 2020 Jul.7新型コロナウイルス感染症にも素早く対応民間金融機関と協調して企業を支援する政策金融特集

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