ファイナンス 2020年7月号 No.656
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資本性資金の提供で 民間金融機関からの融資を促す5月14日の新型コロナウイルス感染症対策本部(第34回)における総理指示により、2次補正予算が編成されることとなった。その内容は、これまでの支援の拡充等と資本性資金による支援に分かれる。これまでの支援の拡充等では、日本公庫等・商工中金の実質無利子・無担保融資の規模を15兆円規模から47兆円規模へ拡充、民間金融機関の無利子・無担保融資の規模を約24兆円から約53兆円に拡充した。また、政投銀・商工中金による中堅・大企業向け融資(シニア)の規模を約5兆円から約10兆円に拡充した。一方、資本性資金による支援では、政投銀・商工中金(中堅・大企業向け)、日本公庫等・商工中金(中小・小規模向け)の資本性劣後ローンが6兆円規模、政投銀の「新型コロナリバイバル成長基盤強化ファンド」の強化で4,000億円の投資枠が確保された。まず、中小・小規模向け資本性劣後ローンでは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた中小企業等に対して、日本公庫及び商工中金(危機対応業務)等が、資本性劣後ローンを貸し出す(図表6)。企業にとって融資は「負債」となるが、資本性劣後ローンは、長期間元本返済がなく、金融機関が資産査定を行ううえで、「自己資本」とみなすことができる。このことは、金融庁において、資本性借入金の取扱いとして明確化している。これにより、企業は民間金融機関や投資家からの投融資を受けやすくなる。資本性劣後ローンの貸付限度は、中小事業(商工中金も同様)が7.2億円、国民事業が7,200万円。新型コロナ特別貸付及びセーフティネット貸付等とは別枠で利用できる。また条件面では、従来の資本性ローンよりも条件が緩和されている(図表7)。たとえば、東日本大震災復興特別貸付では、利率が赤字時0.4%、黒字時3.6%図表6●日本政策金融公庫等・商工中金による中小・小規模向け資本性劣後ローンのスキーム日本政策金融公庫政府出資金等商工中金民間金融機関利子補給等協調融資資本性劣後ローン中小企業・小規模事業者資本性劣後ローン図表7●中小・小規模向け資本性ローン(日本公庫等・危機対応業務)の貸付け条件今般の制度(日本公庫中小企業事業)(参考)震災型資本性ローン貸付限度額7.2億円 7.2億円利率当初3年間:0.5%4年目以降:赤字時 0.5%黒字時 2.6%(期間5年1ヶ月・10年)2.95%(期間20年)赤字時:0.4%黒字時:3.6%貸付期間5年1カ月、10年、20年 一括償還 10年 一括償還資本性の有無○○期限前弁済の可否原則5年超から可原則不可無利子貸付の限度額を拡充。資本性資金による資金繰り支援も総理指示により2次補正予算も編成6 ファイナンス 2020 Jul.

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