ファイナンス 2020年6月号 No.655
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国の財政状況をよりわかりやすく国民に知らせるために作成・公表図表1▲国の財務書類の4表1貸借対照表会計年度末の資産及び負債の状況を明らかにする。2業務費用計算書会計年度の業務実施に伴い発生した費用を明らかにする。3資産・負債差額 増減計算書貸借対照表の資産・負債差額の増減の状況を明らかにする。4区分別 収支計算書財政資金の流れを区分別に明らかにする。図表2▲国の財務書類の会計別の分類1一般会計2一般会計+特別会計3一般会計+特別会計+独立行政法人等(連結)税財源の使用状況も わかりやすく開示可能に日本の財政活動は、必要な財源を国民から税金等として徴収し、適正に配分することを基本にしている。また、収入支出の判断を確実に行うため、国の会計は、現金の授受の事実を重視する「現金主義」を採用している。一方、バブル崩壊後に国の財政が悪化するなか、財政構造改革を進める一環として、「財政状況をよりわかりやすく国民に説明すべき」との要請が高まった。平成11年2月には、首相直属の諮問機関である経済戦略会議で「日本経済再生への戦略」が取りまとめられた。その中で、政府及び地方公共団体の財政・資産状況をわかりやすく開示するため、「企業会計の原則を踏まえた財務諸表を導入すべき」との提言がなされた。これを受けて、平成12年10月に「国の貸借対照表(試案)」(平成10年度決算分)を作成・公表した。その後、平成14年度決算分から省庁別財務書類を作成・公表、平成15年度決算分から、本格的な「国の財務書類」の作成・公表を開始した。「国の財務書類」によって、国の資産・負債の状況がわかりやすくなるとともに、税財源の使用状況についても、わかりやすく開示が可能になった。企業会計とは異なる特性を踏まえた 財務書類を導入現在公表している財務書類は、主に4つの書類から構成されている(図表1)。「貸借対照表」と「区分別収支計算書」は、企業会計とほぼ同様の形態であるといえる。「区分別収支計算書」は「キャッシュフロー計算書」と似た性格を持つ。一方、「業務費用計算書」と「資産・負債差額増減計算書」は、国の特性を踏まえた独自のものとなっている。国の財政活動は、利益獲得を目的としていないため、企業会計のような損益計算書の作成は行っていない。一方で投入されたコストに対して、どれだけの効用・便益を得たか、行政の効率性等を判断する必要がある。そこで、業務実施に伴い発生した費用を明らかにする「業務費用計算書」を作成している。また、貸借対照表の資産・負債差額を増減させるすべての要因を表す計算書として「資産・負債差額増減計算書」を作成しており、主な増減要因となる業務費用や財源のほか、資産評価差額などを計上している。「国の財務書類」は、「省庁別財務書類」を合算して作成するが、会計別に分類すると、一般会計のみを対象としたもの、一般会計と特別会計を対象としたもの、一般会計、特別会計に独立行政法人等の会計も加えた連結財務書類の3種類がある(図表2)。「国の財務書類」の目的1 ファイナンス 2020 Jun.3平成15年度決算分より作成・公表「国の財務書類」で見る日本の財政の現状特集

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