ファイナンス 2020年6月号 No.655
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コラム 経済トレンド72大臣官房総合政策課 大平 翼/野﨑 宇一朗シェアリングエコノミーの拡大がもたらす経済への影響本稿では、昨今、急速に拡大しているシェアリングエコノミーが経済に与える影響について考察していく。シェアリングエコノミーの市場規模・シェアリングエコノミーとは、「個人等が保有する活用可能な資産等(スキルや時間等の無形のものを含む。)を、インターネット上のマッチングプラットフォームを介して他の個人等も利用可能とする経済活性化活動」(注)と定義されている。・近年のICTの発展により、商品の利用状況の継続的な把握や、商品・サービスを保有する個人と利用したい個人をマッチングすることが可能になったことなどを背景に、市場が急速に拡大している。・取引金額ベースでみた2018年度の市場規模は1兆8,874億円となっており(図表1)、シェアリングエコノミーの市場規模は今後も拡大が予想されている。知名度の低さ等シェアリングエコノミーが抱える課題(図表2)を解決することができれば、2030年度には10兆円を超える規模まで成長することが期待されている。(図表1)シェアリングエコノミーの市場規模2兆2909億円3兆6833億円5兆7589億円1兆8874億円2兆5711億円5兆4715億円11兆1275億円課題解決シナリオベースシナリオカテゴリー別の市場規模市場規模合計(注)内閣官房シェアリングエコノミー促進室による定義(出典)内閣官房シェアリングエコノミー促進室、情報通信総合研究所「シェアリング・エコノミー関連調査結果」012120,000100,00080,00060,00040,00020,000010864220182020202520302018202020252030(年度)(年度)(兆円)(億円)お金モノスキルスペース移動ベースシナリオ課題解決シナリオ(図表2) シェアリングエコノミー市場の課題解決シナリオの考え方成長の課題が解決する状況資産・サービス提供者ほとんどの人がシェアリングサービスのことをよく知っているようになる企業(または個人プロ)ではない個人が提供する資産やサービスを利用するのが当たり前になるシェアリングサービスを使ってみて、自分でも資産・サービスの提供をしたいと感じる提供できる資産を持つようになる(現在は提供できる資産を持っていない)自分が提供したい資産・サービスを提供できるようになる(新しいシェアリングサービスが普及する)複数事業者のサービス・情報を集めた「場(プラットフォーム)」が登場し、自分にあったシェアリングサービスがすぐに見つかるシェアリングサービスのイメージが良くなる副収入が必要になるトラブルが起こった場合の保証についての法制度が整備される国や自治体が安全性を保証してくれる国や自治体がシェアリングサービスを提供する誰でも知っているような大企業がサービスを提供するサービス利用手続きが簡単になる得られる対価が高額になる身近な人が資産・サービスを提供するようになる勤めている会社が副業を許可するようになる資産・サービス利用者ほとんどの人がシェアリングサービスのことを良く知っているようになる企業(または個人プロ)ではない個人が提供する資産やサービスを利用するのが当たり前になる資産は自分で購入せずシェアして使う人の方が多くなる自分が利用したい資産・サービスを利用できるようになる(新しいシェアリングサービスが普及する)複数事業者のサービス・情報を集めた「場(プラットフォーム)」が登場し、自分にあったシェアリングサービスがすぐに見つかるシェアリングサービスのイメージが良くなる(所得の低下等で)安価な資産・サービスの必要に迫られるトラブルが起こった場合の保証についての法制度が整備される国や自治体が安全性を保証してくれる国や自治体がシェアリングサービスを提供する誰でも知っているような大企業がサービスを提供するサービス利用手続きが簡単になる料金が低額になる身近な人が資産・サービスを利用するようになる50 ファイナンス 2020 Jun.連載経済 トレンド

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