ファイナンス 2020年6月号 No.655
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この関係は実務的にも非常に重要です。例えば、佐藤(2013)では、プット・コール・パリティの重要性について「オプショントレーダーがまず最初に頭に叩き込まれる、オプションを理解する上で間違いなく何よりも重要な式」(p.23)と強調しています。まず図5の一番左側をご覧ください。この図は、価格がKである国債先物をロングした時における(例えば1か月後など)満期時点の損益を示しています(ロングの場合、1か月後、Kより価格が上がれば利益が生まれますし、Kより価格が下がれば損失が計上されます)。プット・コール・パリティが意味することは、実は、この国債先物の損益をプット・オプションとコール・オプションに分解できるということです。図5には権利行使価格がKであるプット・オプションのショートと権利行使価格がKであるコール・オプションのロングの損益も記載されています。権利行使価格Kのプット・オプションをショートした場合、(プットとコールの価格を捨象すれば)Kより価格が下がればオプションの権利がオプションの所有者によって行使されるため損失を計上しますが、価格が上がれば損益は発生しません(図5(b)がこの関係を示していますが、これは図2を上下逆にした図になります)。一方、コール・オプションは行使価格Kで購入する権利であることを考えると、権利行使価格Kのコールをロングした場合、Kより価格が上がれば行使するため、図5(c)のような形で表現できます(価格が下がると行使しないので損益はゼロです)。大切な点は、図5をみて一目瞭然であるように、満期時点における「国債先物のロング」の損益は「プットの売り」と「コールの買い」の合算で完全に複製できるということです。このことから、下記の関係式を導くことできます。コール−プット=国債先物の損益(1)この関係がプット・コール・パリティです(式(1)における「コール」はコール・オプションをロングした時のプレミアム、「プット」は、プット・オプションをロングした時のプレミアムを指します。そのため、プラスが付されている場合、プレミアムの支払いを意味する一方、マイナスが付されている場合、プレミアムの受け取りを意味します。もっとも、図5ではオプション料を捨象している点に注意してください)。図4 プット・オプションの損益図(時間的価値と本源的価値)国債先物の価格損益152円(=権利行使価格)本源的価値時間的価値+本源的価値ITMOTM図5 プット・コール・パリティのイメージK国債先物の価格損益国債先物の価格損益国債先物の価格損益(a)国債先物のロング(b)プットの売り(c)コールの買いKK44 ファイナンス 2020 Jun.SPOT

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