ファイナンス 2020年6月号 No.655
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4XL。その隣はついに5XL。普通、日本で見るのはかなり大きめのシャツでXXLである。5XLだとそれより3段階大きい。無意味に身体に当ててみたが、私の膝まで隠れた。XXLより小さいサイズをなかなか見つけられない。そして5XLのほうがXXLより数が多い。長袖Mサイズが1つだけあった。着てみると、これも袖が手の拳を隠すほど長い。大変な屈辱だったが、店員に「Sサイズはあるか」と控えめな目線で尋ねた。そういう客は来たことが無かったのだろう。2人がかりで、他の客そっちのけで探してくれた。5分後に、1つだけSが見つかった。丁重に礼を述べ、シャツを買った。この店でつくづく感じたことがある。これは、とても勝てない。ラグビーの話である。4XLや5XLが普通の国民である。母体が違う。中でもラガーマンは選りすぐりの「5XL中の5XL」である。わが桜ジャパンは、本当によく戦った。この南アフリカの選手たちの標的にされ徹底的にタックルされたスタンドオフの田村さん、貴方はよく耐えた。ラインアウトでボールを入れたフッカーの堀江さん、時々ボールを南アフリカに奪われるたびにTVの前でシャウトしてごめんなさい。反省しています。この体格、この手の長さの人たちを相手にするのは、さぞストレスもあったことでしょう。身体にも、心にも。たった2時間の滞在だったが、南アフリカで少しだけ日本に思いを馳せた。そして、少し謙虚になった。(3)フィリピンでもう少し、マニラの話をさせて欲しい。インドや南アフリカと同じく、フィリピンでもエイゴは複数の公用語のうちの1つである。その点コミュニケーションが楽だしフィリピンの国民性故に明るく話が弾むのが常なのだが、密な距離で長い時間を共に過ごすのに緊張と絶対的な沈黙が支配する場がある。マニラ近郊の、私が住んでいた地域からほど近い、とあるゴルフ練習場。ボールが自動的に出てくることは無いだろうなあとは思っていたが、自動だった。いや正確には手動による自動である。何を言っているのか分からないと思うので、右上の写真を見て欲しい。要するに、若い従業員男性が、客がボールを打つたびに、次のボールを手で置いてくれるのである。客がボールを打つ時も、手を引くだけで、その場を基本的に動かない。これは、緊張する。もしクラブの変な所に当たってボールが真右に飛んだらどうしよう。彼を守るものは、何も無いのだ。本番の緊張感で練習したいという向きには良いが、緊張の種類が違う気がする。どうしても思い切り振れない。ゴム製のボール置きを使えば良いではないかと言ってはいけない。これも若年層の貴重な収入源のはずである。45分間同じ時を過ごしたのに一言も口を利かなかった。いや、緊張して、口を利けなかった。相応の心づけを渡し、一言Thank youと言った時、何故だかとても安堵した。2お国、違えども(1)海の向こうでまた会えた自分の住んでいるところから遠く離れた国で、見慣れたものを見つけると嬉しいものである。上に書いた南アフリカでの乗り換えの後、マダガスカルに行った。出張先のニッケル工場の近くで、街路で競うが如く咲き誇り、青空に朱紅を際立たせる鮮やかな花を見つけた。それは、マニラに住んでいた時に春から夏にかけて街中で咲いていた、Fire Treeと呼ばれる樹木そのものである。何故こんなに遠いアフリカに?マダガスカルで咲き誇るFire Tree(白黒ですみません)その後、工場の中を歩いていて、現地の人が挨拶をしているのを聞いて、また驚いた。「こんにちは」と見るだけで緊張しませんか? ファイナンス 2020 Jun.37新・エイゴは、辛いよ。SPOT

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