ファイナンス 2020年6月号 No.655
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4最後にIDA19増資交渉を行う中で、G20議長国として日本が取りまとめた質の高いインフラ投資、国際保健、自然災害に対する強靭性、債務の持続可能性が、IDA19の重点政策として盛り込まれたことは、日本が国際的な開発支援のアジェンダ設定において、強い影響力を有していることの証左でもある。そして、これらの分野は、途上国が持続的な成長を実現するに当たり、間違いなく対応しなければならない課題であるとともに、日本の知見やノウハウが活かされる分野でもある。そのため、今後3年間のIDA19期間中においては、日本として、知見の共有等を通じて、更なる貢献を進めていくことが期待されている。本稿が、今後の日本の開発政策に関する議論の一助となれば幸いである。参考文献津田夏樹「世界銀行グループの増資について(交渉担当者の視点から)」、『ファイナンス』平成30年8月号、2018年山下直樹「国際開発協会(IDA)第18次増資について」『ファイナンス』平成29年7月号、2017年世界銀行グループの主要機関の一つとして低所得国支援を担っているIDAの今後3年間の方針を策定し、ドナーから必要な資金を集めることは、世界銀行グループの最重要任務の一つと言える。開発金融総局の担当副総裁として、この重責を担い、過去最大の資金規模となるIDA19の増資交渉を成功裏に取りまとめたのが、西尾昭彦氏である。ドナー各国と協力して開発支援を行っていく姿勢が高く評価されており、IDA19に日本の重要政策が反映されたのも西尾副総裁との連携によるところが大きい。西尾副総裁は、1988年にヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)により世界銀行に入行して以降、IDA担当局長、南アジア地域担当戦略業務局長、世界銀行研究所業務局長、公正成長・金融・制度(EFI)担当副総裁代行等を歴任。周りからは「アキ」のニックネームで親しまれている。世界銀行入行以前は、海外経済協力基金(現JICA:国際協力機構)に勤務。(参考:世界銀行HP)西尾副総裁コラム 第19次増資を担当した西尾昭彦・世界銀行副総裁IDA増資交渉担当官と世界銀行幹部・事務局職員(Sara Brynedal(スウェーデン外務省)撮影)14 ファイナンス 2020 Jun.国際開発協会(IDA)第19次増資についてSPOT

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