ファイナンス 2020年6月号 No.655
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エ 債務の持続可能性途上国の持続可能な発展を図る上では、債務の透明性を向上させ、債務の持続可能性を確保することが重要である。そのため、IDA19では、借入国の債務の持続可能性を高めるための新たな枠組みを導入することとされている。新たな枠組みの中では、(1)借入国に対して、債務の透明性や債務の持続可能性の向上に資する取組を推進させるためのインセンティブを供与するとともに、(2)貸付を行う国際機関や二国間貸付の各実施機関、民間債権者の間での連携を強化し、持続可能性の妨げとなるような貸付が行われないようにすることが目指されている。(2)増資規模と日本の貢献額増資交渉のもう一つの大きな目的は、全体の増資規模と各国の貢献額について合意することである。2018年に合意したIBRDの増資については、世界経済に占める各国の経済規模等を踏まえた一定の方程式に基づいて、各国に追加拠出の割当がなされたのに対*8) 日本は、IDA19への貢献において、低金利環境下での貢献価値の縮小や出資貢献充実への強い要請を踏まえ、IDA17及びIDA18で活用した融資貢献は見送り、出資貢献に一本化することとした。*9) 日本のIDA19への出資貢献(約3,525億円)と、2005年のG8で決定済みのIDAの重債務貧困国に対する債務救済費用の日本負担分(約480億円)を加えた総額約4,005億円の払込みを行うため、国会において「国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律」の一部改正が審議され、本年3月31日に成立した。して、IDA増資については、各国が、自国の財政状況やIDAが今後3年間に行う支援の内容等を踏まえて、任意に貢献額を決めることとなっている。IDA19においては、日本や米国、欧州を含む多くのドナー国が厳しい財政状況に直面する中で、中国やサウジアラビアなどの新興ドナーからの拠出を増加させるとともに、IDA債発行等の積極活用を図ることにより、最終的にはIDA18よりも70億ドル増で、過去最大となる820億ドルの資金規模を達成した。日本として、IDA19については、日本議長下のG20の成果である質の高いインフラ投資、国際保健(UHC・パンデミック)、自然災害に対する強靭性、債務の持続可能性が重点政策に位置付けられており、その内容を高く評価していることから、厳しい財政状況にある中でも、約3,525億円の出資貢献を行い*8、IDAによる低所得国支援の拡大に貢献することとした*9。その結果、IDA19における日本の貢献シェアは10.0%となり、英国に次ぐ第2位となっている。資料2 国際開発協会(IDA)第19次増資127 207 304 337 348 310 323 2,478 2,776 3,627 3,264 3,120 3,088 3,525 1,904 2,924 02,0004,0006,0008,00010,00012,00014,00016,000050100150200250300350400IDA13(2002-)IDA14(2005-)IDA15(2008-)IDA16(2011-)IDA17(2014-)IDA18(2017-)IDA19(2020-)ドナー貢献(億ドル)日本の出資貢献(億円)(右軸)日本の融資貢献(億円)(右軸)(億ドル)(億円)【ドナー貢献・日本の貢献の推移】世界銀行グループ・(アイダ:国際開発協会)第次増資IDA(アイダ)は、低所得国向けに、超長期・低利の借款やグラントを供与。3年ごとの増資で、必要資金を補充。今回の増資で、IDAは、日本議長下におけるG20の成果を重点政策として位置付け(質高インフラ・国際保健・防災・債務持続可能性)。IDA19の総資金規模は、IDA債発行等の自己資金の積極的活用で、前回比70億ドル増の820億ドルを確保。このうち、ドナー貢献は、中国やサウジなど新興国からの貢献も増加させつつ、前回比13億ドル増の323億ドル。日本の貢献のうち、前回活用した融資貢献(円借款)は、低金利環境下での貢献価値の縮小や出資貢献充実への強い要請を踏まえ、見送り。今回、日本の貢献は出資貢献(3,525億円:出資国債)に一本化し、シェア10.0%を確保(出資順位は英に次いで第2位)。(注)上記の億円に、年ので決定済みのの重債務貧困国に対する債務救済費用の負担分(億円)を加えた出資国債総額は億円。16.0%12.2%10.0%10.9%10.0%10.3%10.0%日本のシェア ファイナンス 2020 Jun.13国際開発協会(IDA)第19次増資についてSPOT

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