ファイナンス 2020年6月号 No.655
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平成27年4月30日に財政制度等審議会財政制度分科会法制・公会計部会の下に設置されたワーキンググループより、「財務書類等の一層の活用」という観点から、「財務書類等の一層の活用に向けて(報告書)」が公表された。その中で次のような提言がなされた。▲提言内容●直接行政サービスを実施している代表的な事業については、各事業の単位当たりコスト情報を提供してはどうか。●資源配分を行っている代表的な事業については、国から交付された資金が最終的に国民に行き渡るまでの中間コスト(間接経費)についての情報を提供してはどうか。これを受けて平成26年度決算分より試行的に(1)「個別事業のフルコスト情報」の把握、開示、(2)各事業の「単位当たりコスト情報」の提供を開始している。フルコスト情報により、行政サービスに使われた全てのコストの現状がわかり、「過去のフルコスト情報」や「類似の行政サービスのフルコスト情報」と比較することで「成果や効果に見合うコストか」を考えるてがかりになる。その際、フルコストそのものを比較するのではなく、フルコストを使った指標の数値を見比べると違いがよりわかりやすくなる。そこでフルコスト情報では、利用者や提供日数などの単位で見る「単位当たりコスト」、行政サービスの受益者が負担した手数料の割合を示す「自己収入比率」、給付金の給付にかかったコストの割合「間接コスト率」を公表している。行政サービスの成果や効果とかかったコストが見合うかわかる個別事業のフルコストを公表5図表8▲フルコストとは(施設の維持管理を行う行政サービスの場合)=++フルコスト人のコスト(職員の給与等)物のコスト(庁舎等の光熱費等)事業のコスト(施設の修繕費、管理費)column法務省の矯正業務では、被収容者の収容を確保し、その人権を尊重しつつ、適切な処遇を実現する必要がある。刑事施設においては、作業や改善指導等、少年施設においては、教科指導や職業指導等を行なっている。これにより刑事・少年司法手続の円滑な運営に寄与するとともに犯罪・非行を犯した者の再犯・再非行を防止し、新たな犯罪被害者を生じさせないという役割を担っている。矯正業務のフルコストは2,635億円で、単位当たりのコストは被収容者1日当たりのコストが1万3,434円、国民一人当たりのコストが2,083円となっている。フルコスト2,635.0億円人にかかるコスト1,659.3億円物にかかるコスト53.6億円庁舎等(減価償却費)240.2億円事業コスト681.7億円(参考)自己収入37.5億円単位当たりコスト被収容者1日当たりコスト13,434円(参考)単位:被収容者数53,735人国民1人当たりコスト2,083円(参考)単位:総人口126,443,180人▲工場にて勤務する刑務官改善指導等を行う刑務官▲▲グループワーク(薬物依存離脱)▼職業訓練(介護福祉科)法務省 矯正業務コラムフルコスト開示例 ファイナンス 2020 Jun.9平成15年度決算分より作成・公表「国の財務書類」で見る日本の財政の現状特集

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