ファイナンス 2020年6月号 No.655
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ここでは歳入歳出決算(現金主義)と財務書類(発生主義)では、数値にどのような差が現れるかを平成30年度のデータを使って見てみよう。歳入歳出決算は、会計期間における収入(歳入)と支出(歳出)の実績を示すもの。平成30年度の歳入歳出決算は図表5のようになる。「純計」とは、一般会計及び特別会計の歳入歳出額の単純合計額から会計相互間等の重複額を控除し、国債整理基金特別会計における借換えのための公債金収入額及び借換償還額を控除したもので、国の実質上の財政規模を示すものといえる。国の歳入歳出決算額(純計)と財務書類の財源·業務費用との相違をまとめると図表6のようになる。まず、収入について歳入決算では243.9兆円になるが、財務書類上の「財源」では129.8兆円となり、▲114.1兆円の差額が生じている。財務書類上の「財源」は、歳入決算額から企業会計上の収益に該当しないものを控除しているのが理由だ。たとえば「公債金及借入金」(▲87.3兆円)は、収入が増加してもその分、負債が増加するため「財源」には計上されない。また、「前年度剰余金受入」(▲12.0兆円)は、既に国の内部で保有している剰余金であるため、計上しない。「資金等より受入」(▲14.8兆円)は、国の内部での資金移動であるため、計上しない。次に支出は、歳出決算額では226.7兆円となるが、財務書類上の「業務費用」では145.1兆円となり、▲81.6兆円の差額が生じている。財務書類上の業務費用は、歳出決算額から企業会計上の費用に該当しないものを控除しているからだ。たとえば、公債金及借入金を収入に計上していないので、「債務償還費」(▲71.1兆円)も支出には計上しない。ほかに「財政融資資金への繰入」(▲10.6兆円)は、国の内部における資金移動なので控除している。一方、歳出決算に計上されていない企業会計上の費用である現金支出を伴わない減価償却費や引当金繰入額などが、財務書類上の業務費用には計上されている。なお、国の歳入と歳出の差額はプラスとなっている(図表5(注1)参照)。一方で、図表6をみると財源と業務費用の差額はマイナス(超過費用)となっているが、これは国の財政状況を企業会計の考え方でみると「当期純損失」(いわゆる赤字決算)であることを示しており、国の厳しい財政状況を一目で把握することができる。公債金、借入金の収入・償還は財務書類の財源・業務費用に該当しない国の「歳入歳出決算」と「財務書類」の違い3図表5▲平成30年度歳入歳出決算(単位:兆円)歳⼊歳出差額(注1)⼀般会計105.799.06.713特別会計合計(注2)381.2368.912.2合計(⼀般会計+特別会計)486.9467.919.0重複分及び借換債控除243.0241.21.8純計(⼀般会計+特別会計)243.9226.717.2(注1)差額は決算上の剰余金であり、一般会計では翌年度への繰越歳出予算の財源に充てられる額(5.1兆円)などが含まれている。また、各特別会計では当該特別会計の積立金への積立て等の処理が行われる。(注2)平成30年度において設置されている特別会計は、右記のとおり。●交付税及び譲与税配付金特別会計●地震再保険特別会計●国債整理基金特別会計●外国為替資金特別会計●財政投融資特別会計●エネルギー対策特別会計●労働保険特別会計●年金特別会計●食料安定供給特別会計●国有林野事業債務管理特別会計 ●特許特別会計●自動車安全特別会計●東日本大震災復興特別会計6 ファイナンス 2020 Jun.

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