ファイナンス 2020年5月号 No.654
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令和4年には間接的な悪影響が 世界で206兆円に上る予測も知的財産侵害物品が輸入され、流通すると権利者が損失を被るのはもちろんだが、経済全体にもさまざまな悪影響を及ぼす。ICC(国際商業会議所)及びINTA(国際商標協会)のデータ(図表1)によると、模倣品・海賊版の総額は2013年時点で9,230億ドル~1兆1,300億ドルだったが、22年には1兆9,000億ドル~2兆8,100億ドルまで増加する見込みだという。また、模倣品・海賊版は間接的に(1)公正な経済活動の阻害、(2)海外投資活動の減少、(3)税収の減少、(4)犯罪の社会的費用の4つの分野で大きな悪影響を及ぼすという。これら4つの分野の間接的な悪影響は13年時点で737億ドル~898億ドル、22年時点では1兆5,400億ドル~1兆8,700億ドル(約206兆円)と見込まれ、模倣品・海賊版による直接的な悪影響とほぼ同規模となっている。結果、直接的悪影響と間接的悪影響の総額は、13年時点の1兆6,600億ドル~2兆300億ドルが22年には3兆4,400億ドル~4兆6,800億ドルに達する見込みだ。同データによると、模倣品・海賊版は経済成長だけでなく雇用面にも大きな悪影響を与えるという。具体的には、模倣品・海賊版による雇用面の損失は13年時点で200万ドル~260万ドルであり、22年には420万ドル~540万ドルまで上昇すると予測されている。また、知的財産侵害物品の輸入は健康・安全への脅威にもつながる。近年、医薬品などの知的財産侵害物品の輸入差止めが増えている。特に多いのは電子たばこのカートリッジや化粧品で、赤ちゃん用の抱っこひもなども差し止められているという。消費者が気づかずに利用すれば、自身の健康を害したり、子どもが危険に晒されたりする可能性がある。さらに、組織犯罪に加担することになる可能性もある。警察庁の「平成23年中における生活犯罪事犯の検挙状況等について」によると、日本の知的財図表1 知的財産侵害物品が経済成長に与える悪影響2013年2022年(予測)模倣品・海賊版の総額9,230億~1兆1,300億ドル1兆9,000億~2兆8,100億ドル間接的な悪影響7,730億ドル~8,980億ドル1兆5,400億~1兆8,700億ドル総額1兆6,600億~2兆300億ドル3兆4,400億~4兆6,800億ドル●間接的な悪影響の内訳2013年2022年(予測)公正な経済活動への悪影響4,700億~5,970億ドル9,800億ドル~1兆2,440億ドル海外直接投資(FDI)減少額1,110億ドル2,310億ドル税収減少額960億~1,300億ドル1,990億~2,700億ドル犯罪の社会的費用600億ドル1,250億ドル出典:frontier economics “THE ECONOMIC IMPACTS OF COUNTERFEITING AND PIRACY, Report prepared for BASCAP and INTA”知的財産侵害物品の取締りの目的公益保護、健康・安全への脅威の未然防止、犯罪組織への加担防止を目指す ファイナンス 2020 May.3令和4年には世界経済への悪影響は515兆円にも知的財産侵害物品を水際で止める税関の取組み特集

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