ファイナンス 2020年5月号 No.654
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労働力人口の変遷並びに消費性向・女性と高齢者の雇用者数は増加しており、労働力人口も増加している。1994年初めから2019年末にかけて、15~64歳の女性は約240万人、65歳以上の高齢者は約514万人増加した(図表13)。同期間において、15~64歳の男性の労働力人口は約341万人減少しており、女性・高齢者の大幅な増加がそれを補っている。この背景には、保育施設の充実などが進む中で女性の労働参加率が上昇してきたことや、年金支給開始年齢の引上げや定年延長による継続雇用が行われる中で、高齢者の労働参加率が上昇してきたことが考えられる(図表14)。・女性や高齢者の雇用者数の増加は、マクロの消費性向にも影響を与えていると考えられる。共働き世帯の消費性向は片働き世帯よりも相対的に低く、また高齢有職世帯は無職世帯より消費性向が低い。そのため、節約志向等とは関係なく、マクロの消費性向が低下し、貯蓄率が増加することとなる(図表15)。(図表13)労働力人口推移(注)人数は季節調整済の月中平均値2,0003,8003,6003,4003,2003,0002,8002,6002,4002,20060040020001994199619982000200220042006200820102012201420162018(万人)(万人)(左軸)15~64歳男性(左軸)15~64歳女性(右軸)65歳以上男性(右軸)65歳以上女性(図表14)労働力率推移(2004年対比変化)(注)労働力率=労働力人口÷15歳以上人口200620082010201220142016201814121086420-22004(%)(年)総数 男女65歳以上 男女15~64歳 男15~64歳 女(図表15)世帯属性別消費性向60歳以上無職世帯60歳以上有職世帯共働き世帯片働き世帯(注)消費性向=消費支出÷可処分所得014012010080604020(%)(出典)日本銀行「経済・物価情勢の展望」、総務省「労働力調査」、総務省「平成26年全国消費実態調査」貯蓄率の展望・2015年以降における貯蓄率のプラス転化は、女性、高齢者による労働参加により各世帯の総所得が増加した一方、支出は住宅等個別項目での増加があったものの、全体では所得ほど増加しなかったため、再び所得が支出を上回る構造に変化したことが主な要因として考えられる。・今後、日本においては、高齢者の割合がさらに増加する(図表16)。ライフサイクル仮説に基づけば、家計は老年期の消費に備えて貯蓄を行い、その後貯蓄を取り崩すため、高齢者の割合が増加するという人口分布の変化は、貯蓄の減少に直結することになる。消費実態調査を用いた研究によれば、これまでも、65歳以上の高齢者の貯蓄率は、近年低下する傾向がみられている(図表17)。今後、世帯類型ごとの所得と支出に大きな変化がなければ、マクロでみた貯蓄率は、徐々に低下していくことが予想される。(図表16)国内人口推計及び高齢者比率016195060708090200010182535454030201001284(千万人)実績推計(%)65歳以上人口4.936.8総人口65歳以上人口比率(図表17)世帯主年齢別貯蓄率推計(注)貯蓄率=貯蓄÷(可処分所得+年金受給権の変動調整(受取))-30(歳)3020100-10-20~2425~2930~3435~3940~4445~4950~5455~5960~6465~6970~(%)1999年2009年2004年2014年(出典)総務省「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所「将来推計人口・世帯数」、山崎朋宏・酒巻哲朗「SNAの枠組みにおける家計詳細勘定の再推計」、宇南山卓・大野太郎「日本の世帯属性別貯蓄率の動向について」総務省「全国消費実態調査」、内閣府「国民経済計算」 (注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。64 ファイナンス 2020 May.コラム 経済トレンド 71連載経済 トレンド

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