ファイナンス 2020年5月号 No.654
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タイ財務省の「Fiscal Sustainable Framework」により、債務残高対GDP比率が60%以下とすること、予算の公債依存度を15%以下とすること、資本的支出を予算の25%以下とすることを規定していますが、その目標の水準を達成しています。ただし、IMF等から懸念点として、今後高齢化社会を迎えたときの財政・社会保障の予期せぬ膨張の可能性が指摘されています。上場企業においては、退職一時金と企業年金の支給を義務付けるなど、社会保障制度の整備が進められているところですが、公的な介護保険制度は未整備であり、一般的には家族やコミュニティが要介護老人を自宅内で介護することになります。介護に関しては日本の制度やノウハウなどで進んでいる点が多く、好機と考え、タイに進出し、介護分野で事業展開をすすめる日系企業も見られます。【日タイの往来】日本からタイへの旅行客は約181万人(2019年 出典:タイ観光スポーツ省)で対前年9.1%であり、国別では8番目に位置します。行先として人気があるのはバンコク、プーケット、アユタヤなどです。逆に、タイから日本への旅行客は約132万人(2019年 出典:JNTO)と前年比16.5%と過去最高となっています。訪日タイ人観光客の特徴は、リピーターが多いこと、個人旅行手配率が高い点です。まずタイ人観光客のうち7割以上がすでに一度日本に旅行したことがある方です。一度目は東京・大阪・京都・北海道・福岡などの大都市へ、二度目以降は地方都市に足を運ぶ観光客が多い傾向が見られます。後者の旅行は宝探しのように訪れたい場所・食べたい店をSNSなどを通じて発掘し、自らSNSで発信する、というのが典型的なタイ人旅行客の行動パターンのようですので、旅行の個人手配率が約8割というのも頷けます。【渋滞事情】タイを語る上で、渋滞事情は欠かせません。特に、バンコクの渋滞事情は世界の都市中11番目の混雑具合(2019年 出典:TomTom)であり、金曜の帰宅ラッシュ時は普段30分で到着する大使館-空港間が3時間かかるときもあります。(バンコク在住の人はかかる渋滞事情をよく理解しているため、仮にスケジュールに遅れたとしても「あー渋滞だったのね」と理解されるケースが多いようです。どうしても遅刻できない場合は相当の余裕を持ち、予定より30分ほど早く到着するつもりで向かい、実際にその通りについてしまったらコーヒーブレイクで時間をつぶす、というのがタイスタイルです。)このような交通渋滞の原因としては、渋滞中も乗用車の狭い隙間を縦横無尽に抜かしていくバイクです。これは乗用車にも当てはまることですが、運転免許の取得が非常に容易であることから交通マナーが徹底されておらず(例えば最も左のレーンから右折する、禁止の場所でUターンするなど)、円滑な車の往来が阻害されるケースが多いです。更に、信号切替が警察官のマニュアル操作で行われています。管轄の境界線上ではいずれの信号も長く通したいため、妥協策として一方の信号が長時間赤、他方が長時間青となるケースが多く渋滞の原因となっております。非常に細かく張り巡らされた交通渋滞の問題もさることながら、交通事故死亡率の高さも問題であり、WHOの統計(出典:Global status report on road safety 2018)によると年間推計死亡者数は10万人あたり32.7人(うち自動二輪車での死者数は24.3人)と、世界でも9番目、アジアでは最悪です。バンコクにおける曜日別・時間帯別渋滞状況(2019年 出典:TomTom)46 ファイナンス 2020 May.連載海外 ウォッチャー

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