ファイナンス 2020年5月号 No.654
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【はじめに】現在、在タイ日本国大使館に勤務しておりますが、直近は英国・ロンドンにて留学しておりました。2018年の7月に渡英しましたが、英国の夏は短く、筆者は日本の都道府県の中でも日照時間の少ない北陸出身ですが、冬は15時で日が落ちるという国で生活し、やや気が滅入る感じがしました。日本と比べて英国のサービスの質が低い(より正確に言えばコストに見合うサービスの質が低い)ことに辟易し、日本はいい国だったなあと思っていたところでしたが、日本への帰国時には下記の出来事から、もう戻ってくることはなかろう、と思いました。留学先のプログラムを終え、帰任のために英国のヒースロー空港に出発の4時間前に到着し、免税手続きカウンターにて1時間並んだ挙げ句に、免税担当者が処理に相当の時間を要したため、フライトの時間の制約から免税手続きを諦め、相当の余裕を持って空港に到着したはずがチェックインカウンターは閉鎖され、交渉の末になんとか、預け入れができ、出発ロビーまでの全力疾走を経て、なんとか出発に間に合いました。NH212の座席に座ったときに、ああ、二度と戻ってくることはないだろうなあと思いました。そして、程なくしてタイへ赴任し、食事が非常に手頃な値段で食べられる、少なくともロンドンと比べて物価が安い、常夏という点を筆頭に、生活のしやすさはロンドンと比べて圧倒的改善をみました。しかし、タイの暑さに慣れてしまうと、ふと英国の寒さを懐かしいと思うことがあります。当初タイでは年中夏物が売られていると思いきや、日本が秋の季節になると長袖が、冬になるとダウンが売られています。そもそもタイではユニクロは富裕層向けのブランドという位置づけであり、海外旅行に行くタイ人向けと思われます(真偽のほどは承知しておりませんが、都市伝説として最低気温が20℃を下回ると凍死者が出るとか)。そのくらいの“冬要素”しか感じられないのがタイです。昨年の6月末にタイのスワンナプーム空港に降り立ち、約1年が近付こうとしているところです。この間、経験したこと、見聞きしたことに関してご提供させていただければと思います。【タイの概要】まず、すでによくご存知の方も多いかと思いますが、タイとはどんな国か簡単にお示しします。人口6,641万人(2018年 出典:タイ投資委員会作成資料)、面積約51万平方kmの立憲君主国(2019年に民政に移管するも依然として軍の影響が大きい)です。日本の国土面積の約1.4倍がありますが、国土の森林率が2/3の日本と比べ、平坦な国であることから、平地面積は日本の約10倍と言われています。そのため、2011年の洪水時(2011年7月31日―12月)には被害が広範に及びました。合計特殊出生率は1.53(2017年 出典:世界銀行)、高齢化率10.97%(2018年 出典:タイ投資委員会作成資料)、そして人口のピークは2028年前後に現れ、生産年齢人口(15~64歳)の比率はすでにピークアウトしていることから、日本よりも急速に高齢化が進んでいくことが予想されています。この点については、対応できる社会・経済的基盤がない現状で高齢化・高齢社会へ突入することに対する懸念の声、課題先進国として日本から学びたい点が多いとタイ政府関係者・有識者等から聞きます。【経済事情】2000年以降の経済状況としては、2008年の世界金FOREIGN WATCHER海外ウォッチャータイに関するあれこれ在タイ日本大使館 春日 慶輝44 ファイナンス 2020 May.連載海外 ウォッチャー

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