ファイナンス 2020年5月号 No.654
43/84

5「みんつく予算」取組の結果(1)A.事業提案の募集提案の募集では、設定されたテーマから1つ選び、「事業の概要、提案に至った思い、見込まれる効果」を記載することとした*20。1か月(9月20日~10月18日)の募集期間で、計229件の提案が集まった。応募資格には、三重県に関心を持つ人から幅広く提案を募るため、住所や年齢の制限を設けなかった*21。地元大学の講義の中で周知したほか、事業提案を課題として取り上げたゼミの先生もいたため、大学生からの提案が多く集まった*22。若年層の行政への理解を深めるため、高校生への周知も今後の課題となる。提案期間中に、みんつく予算をテーマにしたワークショップが有志により複数開催され、その1つに筆者も講師として招かれた(石田礼子さんの感想を参照)。市民が集まってアイデアの改善・統合を進める議論の場は理想的な参加民主主義の実践である。提案を議論する機会を、県庁主催で又は市民と連携して、より多く提供することが望まれる。(2)B.投票候補案の審査及びC.具体的な事業内容の構築集まった提案を担当部局で審査し、20件(1テーマにつき1つ)の投票候補案を選出した。恣意的な審査*20) 応募方法は、電子申請、メール、郵送、職員による回収、財政課への持ち込みとした。電子申請では、独自のインターネット応募フォームを新たに構築する余力がないため、既存の電子申請システムを活用しつつ、リンクできるQRコードをチラシに掲載してアクセスを容易にした。*21) 県内からの提案が182件、県外からの提案が47件あり、最年少は18歳、最高齢は81歳であった。*22) 投票対象となった20の選定候補案のうち、大学生から提案は3件(うち、1件が予算に計上)。*23) 投票方法は、電子申請、メール、郵送、投票箱とした。投票箱は、県庁3階の財政課と津駅前にあるアスト津3階のみえ県民交流センターに設置した。を防ぐため、4つの観点(手段の有効性、事業の効果、手段の効率性、緊要性)で点数評価する客観的な審査方法を定めた。絞り込んだ20件の提案は、各担当部局で実施方法、スケジュール、予算の見積もりなど具体的な事業内容に落とし込まれた。提案者へのヒアリングは提案の意図を確認する程度であったが、より魅力的な投票候補案の構築に向けて、提案の絞り込み・具体化の過程にこそ、提案者や他の市民も交えた討論の場や投票など市民参加が必要だとの指摘もあった。(3)D.県民投票による事業決定20本の事業に対し、どの事業を実施して欲しいかの投票(1人3票まで)を行った*23。投票期間を年末年始を挟んだ1か月間(12月7日~1月6日)とした。投票資格は、予算の使い道を決める投票であることを踏まえ、18歳以上の三重県民とした。高校生など18歳未満の若者の参加を求める意見もあった。12月12日には、提案者本人が担当部局の職員と共に鈴木知事を含む幹部職員の前で提案への思いや事業の効果を訴えるプレゼンテーションを開催し、投票の参考にしてもらうため、その模様をインターネットで中継した(写真1)。明らかに普段の予算編成とは異なる活気があり、提案者(市民)と職員とが協働する(写真2)「みんつく予算総選挙」のチラシ(イラスト:清水夏樹)(写真3)採択事業の提案者への感謝状贈呈式(3月25日)の模様 西さん 大津さん 石田さん 鈴木知事 山根さん 高山さん ファイナンス 2020 May.39三重県庁の参加型予算「みんつく予算」の取組について SPOT

元のページ  ../index.html#43

このブックを見る