ファイナンス 2020年5月号 No.654
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財務省・税関は、摘発事例1として紹介した過去最高の押収量となる覚醒剤密輸入1トン事犯について、関係機関である海上保安庁・厚生労働省地方厚生局麻薬取締部と連名で、令和2年2月12日、第32回人事院総裁賞*8を受賞しました。本事犯は、調査開始から摘発に至るまでの約1年半にも及ぶ長期間の粘り強い調査が実を結んだものであり、過去最大量となる覚醒剤約1トンの密輸入を阻止し、国内治安の維持に大きく貢献したと評価され、本受賞に至ったものです。以下、本事犯について、概要を紹介させていただきます。平成29年11月、漁民から海上保安庁に寄せられた不審者情報を基に、海上保安庁は、内偵捜査、防犯カメラ解析等から、覚醒剤密輸入を企図する在日外国人等の関与を突き止め、財務省・税関、厚生労働省地方厚生局麻薬取締部及び警察の関係機関と大規模な合同捜査体制を構築することになりました。合同捜査では、主として、各機関の強みを活かした調査・捜査に従事し、財務省・税関では、東京税関・名古屋税関・門司税関の職員による嫌疑者らの入国に備えた各空港への入国手配を実施するとともに、入国後の尾行等を実施しました。なお、入国後の尾行は、北は北海道から南は沖縄まで広範囲に行われ、正月休みも返上して実施されました。令和元年5月、嫌疑者らが再び入国したことから尾行を開始したところ、南伊豆町の漁港を下見する等の不審行動が見られたことから、覚醒剤を密輸入する可能性が高いと思料し、海上保安庁らと共に、巡視船艇等を活用した洋上取締体制による徹底した警戒を実施しました。その結果、同年6月2日、嫌疑者らが鳥島南西方沖において船籍不詳の船舶から嫌疑者らが乗船する船舶へ覚醒剤を積み替え、同月3日、静岡県賀茂郡南伊豆町の海岸に陸揚げしたことから、翌4日にかけて嫌疑者7名を覚せい剤取締法(現在の「覚醒剤取締法」。以下同じ。)違反(営利目的共同所持)で逮捕しました。財務省・税関では、同月27日、本件密輸について関税法違反で東京地方検察庁へ告発しました。なお、東京地方検察庁は、本件について、同年6月24日、覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)で、同年11月5日、関税法違反で起訴しました。今後も関係機関と連携を密にし、不正薬物等の流入を阻止し、国内治安の維持に努めて参ります。写真 人事院総裁賞の代表受賞者(東京税関)第32回人事院総裁賞受賞について*8) 人事院総裁賞は、多年にわたる不断の努力や国民生活の向上への顕著な功績等により、公務の信頼を高めることに寄与した職員(一般職の国家公務員)又は職域を顕彰するものです。(昭和63年創設、今回32回目)受賞者は、各府省等から推薦された候補の中から、選考委員会が選考を行い、その結果に基づき人事院総裁が決定します。 ファイナンス 2020 May.29令和元年の密輸動向及び第32回人事院総裁賞受賞について SPOT

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