ファイナンス 2020年5月号 No.654
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はじめに財務省・税関では、不正薬物、銃砲等のいわゆる社会悪物品の国内流入阻止を最重要課題の一つとして位置づけ、情報収集・分析・活用の強化、取締・検査機器の増強等、種々の施策を推進し、水際取締りの強化に取り組んでいるところです。先般、「令和元年*1の全国の税関における関税法違反事件の取締り状況」を公表したので、紹介します。なお、本文中の意見にわたる箇所は、筆者の個人的見解です。1不正薬物全体の密輸入動向不正薬物*2全体の摘発件数は1,046件(前年比20%増)、押収量*3は約3,318㎏(前年比約2.2倍)となり、史上初めて3トンを超えました。この様に、我が国への不正薬物の流入は引き続き拡大傾向にあり、極めて深刻な状況となっています。[表1参照]財務省・税関では、このような大量の不正薬物が日本に向けられていることに対し、警戒を強めているところです。2覚醒剤の密輸入動向覚醒剤の摘発件数は425件(前年比約2.5倍)、押収量は約2,570㎏(前年比約2.2倍)と大幅に増加し[表1参照]、“史上初めて2.5トンを超える”とともに“4年連続1トン超え”となりました。また、覚醒剤の押収量は、不正薬物全体の約8割を占め、我が国への覚醒剤の流入が特に深刻な状況となっています。なお、押収した覚醒剤は、薬物乱用者の通常使用量で約8,566万回分、末端価格にして約1,542億円に相当します。*1) 平成31年1月から令和元年12月まで。*2) 覚醒剤、大麻、あへん、麻薬(ヘロイン、コカイン、MDMA等)、向精神薬及び指定薬物をいいます。*3) 錠剤型薬物を除きます。*4) 航空機旅客には、航空機乗組員を含みます。*5) 商業貨物には、別送品を含みます。*6) 船員等には、洋上取引のほか、船舶旅客を含みます。密輸形態別では、全体の摘発件数の半数以上を航空機旅客*4が占め、航空機旅客の摘発件数は前年比約2.5倍、押収量は同比約2.6倍と大幅増加となりました。商業貨物*5のうち、特に航空貨物の摘発件数は前年比約8.2倍、押収量は同比約14倍と著しく増加しました。国際郵便物の摘発件数は前年比63%増、押収量は同比約3.7倍と増加し、船員等*6(洋上取引等を含みます。)の押収量は前年比約11万倍と著しく増加しました。[表2参照]摘発事例1 洋上取引(過去最高の押収量)令和元年6月、東京税関等は、鳥島南西方沖において洋上取引された覚醒剤約1トンを静岡県賀茂郡南伊豆町の海岸において発見、摘発しました。令和元年の密輸動向及び 第32回人事院総裁賞受賞について関税局調査課 課長補佐 齋藤 博昭26 ファイナンス 2020 May.SPOT

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