ファイナンス 2020年5月号 No.654
26/84

2020年2月、日EU経済連携協定(EPA)が発効してから1年が経ちました。本稿では、日EU EPAの概要、運用改善に向けた取り組み、また、発効1周年を記念して開催されたセミナーについて記述します。なお、文中、意見等に係る部分は筆者の個人的見解です。1日EU EPA発効までの経緯我が国は、国際貿易の発展を通じた経済成長を目指してきています。そのような中、世界各地で自由貿易に逆行する保護主義が台頭し、また、WTOドーハラウンドが停滞していることを背景として、我が国は、経済連携の強化に向けEPAを締結してきています。このEPAの推進は、アベノミクスの成長戦略の重要な柱の一つとなっています。我が国は、2002年の日シンガポールEPAを初めとし、これまで数多くのEPAを締結してきています。その中、EUとの経済連携強化に向け、2013年3月にEUとの交渉を開始、5年の年月をかけ2018年に署名、2019年2月に日EU EPAの発効に至りました。シンガポールから数えて、我が国にとって18本目のEPAとなっています。2日EU EPAの利用状況世界でも有数の経済規模を持つEUと日本が、経済連携協定により一つの経済圏となる、これは大きなインパクトがあることでした。両者を合わせると、世界のGDPの約3割、また、世界貿易の約4割を占めることとなります。このEPA締結により、日本経済にも大きなメリットが期待され、日本の実質GDPを約1%押し上げ、雇用を0.5%創出する効果が見込まれました。日EU EPAの発効後の利用状況を見てみると、我が国が締結したEPAの中で最も利用されていることが分かります。日EU EPAの下、特恵税率(後述します)で我が国に輸入される貨物の額は約1兆円、これは我が国の全EPAの特恵輸入額の実に23%に上ります(2019年2~10月実績)。日EU EPAが我が国経済にどのくらい大きく貢献しているか、この数字からお判りいただけると思います。日EU経済連携協定発効から1年を経過して関税局原産地規則室長 井田 直樹主なEPA/FTAの利用割合EPA/FTA輸入金額2019年2月~10月(単位:百万円)割合EU1,063,95923%日アセアン718,78416%TPP11641,39914%タイ562,22612%インドネシア293,6396%フィリピン219,2265%その他1,086,69124%合計4,585,924100%データ元: 財務省貿易統計主なEPA/FTAの利用割合データ元:財務省貿易統計22 ファイナンス 2020 May.SPOT

元のページ  ../index.html#26

このブックを見る